研究課題
本年度の研究実績として、p53に関するより包括的な研究である「脊椎動物の進化におけるp53四量体形成ドメインの構造安定性の解析」および「大腸菌発現系におけるp53四量体形成ドメインの熱力学的安定性とタンパク質発現量の相関解析」を実施した。脊椎動物のp53タンパク質の配列に対して、各生物種の四量体形成ドメイン配列から特徴的な配列を選択、化学合成し、ペプチドの四量体形成能および熱力学的安定性を解析した。初期の脊椎動物である魚類は、ヒトとは一部異なる構造ではあるが、安定な四量体形成ドメインを有していた。その後、両生類および爬虫類への進化に伴って四量体構造は一旦不安定化したが、鳥類および哺乳類において再度安定化する傾向が見られた。体温変化および環境変化に対する対応が再安定化の要因かもしれない。次に、熱力学的安定性のみを変化させることが可能なp53四量体形成ドメイン点変異体を利用し、タンパク質の構造安定性が大腸菌での発現量に与える効果を定量的に解析した。その結果、四量体解離の自由エネルギーであるΔGuが100 kJ/mol以下の不安定な変異体は、ほとんど発現が見られなかった一方で、より安定な変異体では、発現量と安定性が正の相関を示した。これより、大腸菌系での実質的なタンパク質発現のために、タンパク質の熱力学的安定性が重要な要因であることが示された。今後、p53四量体形成ドメインに関連したこれらの研究がさらに進むことで、大腸菌発現系によるタンパク質調整法の改善や、ヒトよりも高度な癌化抑制能を有する生物を模倣した癌治療の進展が期待される。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Chemistry Letters
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