ローレンツ型IIB行列模型に関する先行研究において、超弦理論で予言される(9+1)次元時空の実時間発展を数値的に調べることにより、(3+1)次元時空が出現することが示唆される。一方でこの模型を扱う為には、赤外カットオフを導入し模型を正則化する必要がある。通常の格子理論と異なり、この模型においては無限体積極限で赤外カットオフの効果が消えることは自明ではない。 そこで本研究では、出現した(3+1)次元時空のカットオフ依存性を見るために、赤外カットオフの形式を拡張するパラメータを導入し、体積が十分大きい時刻における膨張則のパラメータ依存性を検証した。これにより指数関数的膨張が定量的にほぼ一致するようなパラメータ領域が存在することを確認し、そこでは赤外カットオフの影響が消えることが示唆される。さらに、Schwinger-Dyson方程式を用いた数値解析からこの領域におけるカットオフ効果が無限体積極限で確かに消えることを見た。
また本研究ではユークリッド型IIB行列模型のトイモデルに対して時空の次元性を数値的に調べた。ここで扱ったトイモデルはSO(4)回転対称性を持つ行列模型で、先行研究によってフェルミオンがある場合には回転対称性が自発的に破れ2次元空間が出現することが示唆されている。 本研究ではこの模型に対し複素ランジュバン法を適用し、同様に回転対称性の自発的破れを数値的に検証した。そこで、模型に一旦外場を導入することで複素ランジュバン法の適用範囲を拡げるという処方を新たに考案し、それによりSO(4)からSO(2)への自発的破れが実際に起こることを数値的に示した。さらに導入した外場をゼロに外挿することで、先行研究の結果を定量的にも再現した。特に、本研究で得られた結果は第一原理計算から自発的対称性の破れを示すことが出来たという点で先行研究の結果を確固とするものであると考えられる。
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