研究課題/領域番号 |
13J03755
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
杉本 陽奈子 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 古代ギリシア / アテナイ / 外人 / 顕彰 / 商人 |
研究概要 |
本研究は、古典期アテナイの外人を、ポリス社会内部にとどまらず東地中海域において活動する存在としてとらえなおすことで、古代ギリシア史を新たな観点から構築することを目的とするものである。そこで、先行研究が論じてきた、ポリス社会における社会的地位という問題設定自体を再考し、こうした外人が従事した職業や、アテナイというポリスとの間に形成された関係性に着目することによって、彼らの活動を時代背景とあわせて解釈することを当面の課題とする。本年度は、古典期アテナイの外人である海上交易商人の性格について、顕彰決議碑文を主たる分析対象に据えることにより、二つの観点から考察をすすめた。第一に、交易関連奉仕に対する顕彰決議碑文を分析することで、こうした顕彰制度の存在を前提として形成された、海上交易商人間の秩序について検討した。海上交易商人の中には、様々な動機から、何らかの見返りを求めてアテナイに対して積極的に奉仕を行う者がいたことが知られている。これらの分析をとおして、海上交易商人の中には質的に異なる商人層が存在したこと、および、交易関連奉仕はアテナイのみならず他の商人にとっても有益なものとして機能し得たということを確認した。この成果については、学会で口頭報告を行った。第二に、アテナイ社会による海上交易商人の受け入れ方について、顕彰決議により付与された特権に着目することで考察を行った。その結果、海上交易商人に対する顕彰に伴う特権の種類には偏りがあることが確認された。この背景を解き明かすために、彼らに対して付与された特権に関するデータ収集を行い、検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、古典期アテナイの外人について考察する上で重要な史料である顕彰決議碑文の分析をすすめることにより、本研究で検討すべき問題点を明確化することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度のデータ収集およびその検討結果をふまえ、外人に対して付与された特権に関する考察をさらに深める。具体的には、こうした特権が付与された社会的背景について法廷弁論を史料として分析を行い、顕彰決議碑文の検討から得られた結果とあわせて総合的に解釈する。
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