研究課題/領域番号 |
13J03755
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
杉本 陽奈子 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 古代ギリシア / アテナイ / 穀物供給 / 顕彰 / 銀行 / 商人 |
研究実績の概要 |
本年度は、古典期アテナイの外人の性質のうち、とりわけ前4世紀アテナイの穀物供給問題にかかわるものについて、次の二つの観点から研究をすすめた。第一に、顕彰決議碑文に関する前年度の研究内容を発展させ、穀物供給政策としての顕彰決議が行われた社会的背景について論じた。関連碑文を詳細に検討した結果、顕彰によって付与された特権の中には、奉仕者がポリスの維持にかかわるような重要な行為を行った場合にのみ付与されるものが存在したことが明らかとなった。そして、この特権が交易関連奉仕を行った外人には付与されなかったことから、海上交易商人に対するアテナイ社会の開放性が限定的なものであったという結論を導き出した。この研究成果については、学会で口頭発表を行った。第二に、法廷弁論の分析をとおして、銀行業に従事する者の活動について考察した。先行研究が、主として古代世界における銀行の経済的意義という観点から検討を行ってきたのに対し、本研究は、銀行の社会的意義に注目して史料の分析をすすめた。その結果、銀行家は、銀行の利用者に限らず、アテナイ市民や外国の有力者といった様々な層との人的紐帯を形成し、一定の社会的影響力を有する人々であったという状況が浮かび上がってきた。関連史料のさらなる検討が求められるが、現段階では、これらが銀行の運営を支えるものとして機能すると同時に、銀行の主たる利用者である海上交易商人の活動を支えていた可能性が高いという見通しを持っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、顕彰決議碑文と法廷弁論という二種類の史料を組み合わせて分析をすすめることによって、前4世紀アテナイの穀物供給にかかわる人的紐帯の役割について、海上交易や銀行業といった複数の観点から詳細な検討を加えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
穀物供給に関する本年度の研究成果をふまえつつ、前4世紀アテナイにおける商業全般にかかわる政策に目を向け、そこで外人が果たしていた役割について分析をすすめる。具体的には、碑文や法廷弁論の検討をとおして、商業関連法の運用の実態について考察する予定である。
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