これまで私は、ヒトPatched1 (Ptc1) 第7細胞質ドメイン (intracellular domain 7: ICD7) との新規結合タンパク質としてA kinase interacting protein (AKIP1) を同定した。AKIP1はNF-κBファミリー転写因子であるp65の核内保持に関与する報告がある。一方、Sonic hedgehog (Shh)-Ptc1依存的情報伝達経路とAKIP1との関連は全く調べられていない。そこで本研究では、AKIP1によるPtc1 ICD7断片の制御メカニズム解明に向け、Ptc1 ICD7がAKIP1と複合体を形成することに着目した。Shhシグナル伝達経路における最終アウトプットであるGli転写因子の活性測定により、Ptc1 ICD7-AKIP1複合体が果たす役割を明らかにすることを課題とした。 Shh応答能を有する間葉系幹細胞において、siRNAによるakip1遺伝子ノックダウン条件下では、コントロールに比べて骨芽細胞分化マーカーであるアルカリフォスファターゼ (ALP) 活性が上昇したことから、AKIP1が骨分化抑制に寄与する可能性を見出した。一方、akip1非ノックダウン条件では、外来性Ptc1 ICD7の導入がALP活性に影響を与えないのに対し、akip1ノックダウン条件下では外来性Ptc1 ICD7導入がALP活性を大きく減少させた。これらの結果は、AKIP1発現抑制に起因したALPの活性化がPtc1 ICD7による抑制を受け得ることを示唆する。さらに、AKIP1によるPtc1 ICD7の核局在への制御機構を調べるために、間葉系幹細胞におけるPtc1 ICD7 C末端認識抗体を用いた免疫染色により、ICD7の細胞内局在を解析した。コントロールであるakip1非ノックダウン条件では、Ptc1 ICD7が強く核に局在するのに対し、akip1ノックダウン条件では、細胞内在性Ptc1 ICD7シグナルが核から失われることを見出した。これらの結果から、Ptc1 ICD7の核局在にはAKIP1が必要であることが示唆された。
|