研究課題
本研究の目的は、生殖中枢であるキスペプチンおよびGnRHニューロンを制御するメカニズムの解明である。「キスペプチンニューロンのGPCR遺伝子発現を解析し、キスペプチンニューロンに入力する求心性神経伝達物質あるいは神経ペプチドを同定すること」および「GnRHニューロンに発現するオーファンGPCRの中から新規キスペプチン受容体を同定すること」を目指し、本年度は以下の3点を実施した。1. キスペプチンおよびGnRHニューロンにおける既知受容体の発現解析赤色蛍光タンパク質tdTomatoを指標にキスペプチンニューロンを、GFPを指標にGnRHニューロンをラット視床下部から採取し、逆転写PCRによって、キスペプチン受容体(GPR54)、NKB受容体およびダイノルフィン受容体の遺伝子発現を解析した。2. キスペプチンニューロンに発現する遺伝子の網羅的解析およびGPCR遺伝子の選出1.と同様に採取された、キスペプチンニューロン由来のcDNAを磁気ビーズにより精製し、次世代シーケンサによる網羅的遺伝子解析に供した。3. GnRHニューロンに発現するGPCR遺伝子強制発現細胞株の作成GPR54遺伝子をN7細胞(マウス視床下部由来細胞株)に導入してGPR54強制発現細胞を作成し、キスペプチンの部分ペプチドを投与して細胞内ルシフェラーゼ活性を測定し、GPCRシグナリングアッセイを確立した。以上より、本年度は、キスペプチン、NKB、ダイノルフィンの受容体局在を弓状核において明らかにした。また弓状核キスペプチンニューロンに発現するGPCR遺伝子を網羅的に解析した。さらに、オーファン受容体のリガンド探索を目的としたルシフェラーゼアッセイ系を確立した。以上の成果より、キスペプチンニューロンの活動を制御する新たなメカニズムの一部が明らかになりつつあり、新たな繁殖制御剤の開発に寄与することが期待される。また本研究の応用を目指し、性成熟期のブタにおけるキスペプチン遺伝子発現を解析した結果をまとめた論文の、学術誌への掲載が決定した。
1: 当初の計画以上に進展している
キスペプチン・GnRHニューロンの活動を制御する新たなメカニズムが、当初の年次計画通りに明らかになりつつあることに加え、本研究で得た知見を家畜に応用することを目指し、性成熟期のブタにおけるキスペプチン遺伝子発現に関する論文の学術誌への掲載が決定したため。
今後は、キスペプチンニューロンに発現するGPCRの生理的機能を明らかにすることを目指す。専攻研究により、既にリガンドの明らかになっているGPCRに関しては、in vivoおよびキスペプチンニューロン培養系へのリガンド投与実験を行う。また、リガンド未知のオーファンGPCRに関しては、ノックアウトラジトの作出に着手し、繁殖機能に関する役割を明らかにすることを目指す。
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Journal of Repoduction and Development
巻: (未定)