研究課題/領域番号 |
13J03782
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
牧野 良輔 岩手大学, 農学部, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 糖化反応 / トリプトファン / PHP-THβC / 筋芽細胞 / タンパク質合成 / インスリン様成長因子 / 高速液体クロマトグラフ質量分析計 |
研究実績の概要 |
インドールアルカロイドの一つであるPHP-THβCは摂食行動へ影響を及ぼす可能性が考えられた。そこでPHP-THβCをニワトリに投与し、PHP-THβCと摂食行動の関係を調査する前段階として、投与したPHP-THβCの消失速度を生体内で調べた。PHP-THβCをニワトリの翼下静脈から投与し、経時的に血液を採取した。血漿中のPHP-THβC濃度は、高速液体クロマトグラフ質量分析計(LCMS)を用いて測定した。統計解析ソフトSASを用いてPHP-THβCの半減期を算出したところ、PHP-THβCの生体内半減期は99.02分と計算された。
糖化したアミノ酸はアミノ基にグルコースのカルボニル基が結合するため、アミノ酸と糖化アミノ酸の間ではペプチド結合が形成できず、アミノ酸の糖化反応はアミノ酸の栄養価値を損ねると推察された。そこで、トリプトファンの非酵素的糖化反応生成物であるPHP-THβCの栄養学的価値を調べるために、PHP-THβCをトリプトファン欠乏培養液に添加して、ニワトリ胚筋芽細胞のタンパク質合成に及ぼす影響を調べた。孵卵17日目のニワトリ胚から浅胸筋を取り出し、トリプシン処理によって筋芽細胞を得た。その後、トリプトファン欠乏培養液を対照区とし、処理区には添加物(トリプトファンまたはPHP-THβC)を段階的に培養液へ添加した。また培養液のIGF-I濃度は0および20 ng/mlの2レベルとした。タンパク質合成を測定するために培養液に放射性フェニルアラニンをトレーサーとして添加した。一晩培養した後に、細胞内タンパク質画分の放射能を液体シンチレーションカウンターで測定し、タンパク質合成の指標とした。トリプトファン添加と比較し、PHP-THβC添加による筋芽細胞のタンパク質合成促進効果は低く、PHP-THβCはタンパク質合成の前駆体となり得ないと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、以下の3点を課題としている。第一に、トリプトファン糖化反応化合物をニワトリヒナに投与することで摂食行動へどの様な影響を及ぼすのか調査する。第二に、トリプトファン糖化反応化合物による、ニワトリの筋肉タンパク質代謝調節機構を解明する。第三に、放射性トリプトファン糖化反応化合物をニワトリに投与し、糖化反応化合物の代謝分解機構を解明する。 第一の課題については、予備実験としてトリプトファン糖化反応化合物の一つであるPHP-THβCをニワトリの翼下静脈から投与し、PHP-THβCの生体内半減期を測定した。その結果、PHP-THβCの血中半減期がおよそ100分程度であることを明らかにした。今後、PHP-THβCをニワトリの翼下静脈から投与し、飼料摂取に及ぼす影響を調査する。第二の課題については、筋芽細胞を用いて、非酵素的糖化反応化合物が栄養素としてアミノ酸の代替物となり得ないことを明らかにした。第三の課題については、糖化反応化合物の代謝分解機構の解明に必要な3H標識PHP-THβC を3H標識トリプトファンから合成することに成功している。今後、放射性PHP-THβCをニワトリの翼下静脈から投与し、代謝分解機構を調査する。 以上のように、当初の目的を達成すべく実験は順調に遂行されており、期待通りの研究の進展があったと判断される。
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今後の研究の推進方策 |
トリプトファン糖化反応化合物であるPHP-THβCが摂食行動に及ぼす影響を調査するため、翼下静脈よりPHP-THβCを投与し、摂食行動への影響を調査する。 また、トリプトファン過剰添加飼料の給与がニワトリのPHP-THβCの代謝に影響を及ぼすか調査するため、トリプトファン過剰添加飼料を給与したニワトリの翼下静脈よりPHP-THβCを投与し、その半減期を調べる。 次に、放射性トリプトファンから合成した放射性PHP-THβCをニワトリに投与し、各組織に取り込まれた放射能を調べることで、PHP-THβCの取り込みの組織特異性を調査する。
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