研究課題
本研究では、環境光の変動により大きく変容しうる運動知覚に着目し、錐体と桿体が同時に機能する薄明視下の視覚情報処理機序を実験的に明らかにすることを目的とした。本年度は以下の成果を得た。(1)先行刺激により後続の運動方向が曖昧な多義運動刺激(テスト刺激)の見かけの運動方向が一義に定まる視覚運動プライミングの効果を明所視から暗所視まで様々な環境光レベルで測定した。その結果、先行刺激とテスト刺激を視野中心部に提示した場合には、環境光レベルに依存せずプライミングが生じ、一方で先行刺激とテスト刺激を視野中心部と周辺部にそれぞれ分けて提示した場合には、錐体と桿体の寄与率が同程度となる薄明視範囲でプライミングが消失した。視野中心部には錐体が多数存在し、視野周辺部には桿体が多数存在するという網膜の特徴から、薄明視では視野中心部の錐体からの情報と視野周辺部の桿体からの情報が適切に統合されず、結果としてプライミングが消失することが示唆される。(2) 薄明視下で錐体からの情報と桿体からの情報が統合されない原因の一つとしては、錐体と桿体における情報処理速度の差が挙げられる。桿体における情報処理は錐体に比べると遅いため、薄明視ではプライミングの生起に関わる運動統合メカニズムへの情報入力が適切なタイミングで行われず、結果としてプライミングが消失する可能性がある。視野周辺部において、テスト刺激を提示するタイミングを早めることにより桿体からの情報入力の遅延を補償したところ、薄明視においてもプライミングが生じた。これは、上述の仮説を支持する結果である(査読付国際学術誌1件、国際学会1件、国内学会2件)。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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