研究課題/領域番号 |
13J03835
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
曽宮 正晴 名古屋大学, 生命農学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | B型肝炎ウイルス / DDS / siRNA / リポソーム |
研究実績の概要 |
バイオナノカプセル(BNC)とリポソーム(LP)との複合体(BNC-LP)の、細胞内における動態を電子顕微鏡(分解能~数nm)を用いて行った。BNC-LPの内部に金コロイドを内封し、ヒト肝臓細胞Huh7に取り込ませ、細胞内の金コロイドの局在を観察した結果、一部の金コロイドはエンドソームやライソソームから細胞質へ移行していることが示された。これは、BNCがもつ膜融合活性が、エンドソーム/ライソソームといった酸性pHの環境で増強され、BNC-LPの脂質膜成分とエンドソーム/ライソソームの膜成分とが融合し、結果としてBNC-LP内部の物質が細胞質へ移行している事を示すデータであると考えられる。この現象を更に解析する為に、BNCもしくはBNC-LPと、脂質二重膜との相互作用の生化学的解析を実施した結果、BNCやBNC-LPが酸性pH依存的な膜融合能を示す事、更にBNCのLタンパク質に生体膜を破壊する活性がある事を見出した。これら、膜融合と膜破壊の現象はBNCだけでなく、HBVが細胞に侵入する初期感染の際にも重要なイベントである事が予想される。また、BNCの膜融合ドメインのペプチドを化学合成し、LP上に提示して同様の解析を行った結果、BNCと同様に膜融合能、膜破壊能を有している事が示された。これらの結果より、BNCと同様の機能を持つ粒子を再構成できたと言える。 また、BNC-LP複合体の応用を目指し、臨床応用が期待されている治療用核酸siRNAのキャリアとしての検討を行った。種々の検討の結果、これまで内封が難しかった相転移温度の高い脂質組成のLPへのsiRNAの内封や、アニオン性LPへの高効率siRNA内封、更にLP表面を高分子(ポリエチレングリコール)鎖でコーティングする事に成功した。また、LP表面へ標的化ペプチドを修飾し、標的細胞への結合性を付与したLPの作製にも成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年までのBNC-LP複合体の細胞内動態解析を更に進展させ、これまで使用していた共焦点顕微鏡(分解能~200nm)と比較してはるかに分解能の高い電子顕微鏡(~数nm)を使用して解析を行い、BNC-LPの細胞内局在を詳細に解析できた。また、siRNAのLP内への高効率内封法を開発、発展させ、特許出願した事は十分な成果であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでBNC-LPが標的細胞の細胞質へ効率的に内封物を送達できる事、更にはsiRNAをin vitroで標的細胞へ送達できる事に成功している。次のステップとして、siRNA搭載BNC-LPを動物レベルで使用できるかどうかの検討を進める。また、BNCの様な機能を有するナノキャリアを、生物由来の素材を使用せず、再構成するアプローチを同時に進めていく。 平成26年度までに明らかにした、BNCが有する膜融合・膜破壊活性については、HBVの生活環を明らかにするうえでも非常に重要な課題でもあるので、今後は、膜融合・膜破壊の分子的なメカニズムの解析を進め、BNC、延いてはHBVのヒト肝臓細胞への感染機構の一端を明らかにする事を目指す。 更に、予備的なデータではあるが、BNCに化学的な修飾、改変を加えることで、標的細胞への送達効率が飛躍的に向上する事を見出している。こちらについても、更に検討を進めていく。
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