中枢神経系の興奮性シナプスの後部は,アクチン線維を主要な細胞骨格とする、樹状突起からつきだしたマッシュルーム様の微小突起構造であるスパインに形成される。これまでの研究から、アクチン線維に依存したシナプス分子動態やスパイン形態の制御が、シナプス機能と強く関連していることが明らかにされてきた。したがって、シナプス機能調節を基本原理から理解するためには、スパイン内でのアクチン線維、あるいはアクチン線維を中心とした分子集合体構造の動態を明らかにする必要がある。蛍光相関分光法あるいは蛍光相関分光法を空間的に拡張した画像相関分光法は、細胞内の微小領域に存在する蛍光分子の運動を測定する方法であり、その運動性から分子間相互作用や細胞内環境を解析可能な方法である。本研究では、それらの測定方法を装置レベルから最適化することでスパインを含む細胞内微小領域において分子動態が測定できるようにした。神経細胞内の様々な微小領域において分子動態を測定、比較することでコンパートメント毎に細胞内環境を反映した分子動態が測定できていることがわかった。プローブの大きさを変化させて測定を行ったり、様々な薬剤で処理した場合の応答を評価することで、スパイン内部での分子集合体の構造変化が蛍光相関分光法あるいは画像相関分光法で測定できる分子動態を変化させることを明らかにし、部分的にではあるが分子動態から細胞内構造が推定できることを示した。
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