研究課題/領域番号 |
13J03850
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
土山 玄 同志社大学, 文化情報学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 計量文献学 / 計量文体論 / 源氏物語 / 宇治十帖 / 成立論 / 複数作者説 |
研究概要 |
本研究の目的は、古典文学作品である『源氏物語』を対象とし、統計的な分析手法を用いて、複数作者説の検討および『源氏物語』全54巻の成立順序の推定である。平成25年度において、主に取り扱った研究テーマは前者の複数作者説の検討であり、特に「宇治十帖」と称される『源氏物語』の最終の10巻において論じられる複数作者説の検討を加えた。 研究を実施する中で予定していた分析項目よりも重要度が高いと判断される5項目、すなわち語の出現率、語の長さ(語の文字数)の分布、文の長さ(1文における単語数)の分布、品詞構成比率、語彙の豊富さを優先的な分析項目として採り上げた。語の出現率に関しては、より詳細に検討するために、出現率の他にtf-idfやエントロピーなどといった指標による語の重み付けを用いた分析、および特徴語の抽出も行った。これらの分析項目が複数作者説を計量的に分析する上で有効であることを検討するために、『源氏物語』と作者が異なることが明確な、同時期の古典文学作品である『宇津保物語』を比較対象とした。 これら2作品について、上記の5項目について作者の相違に基づく使用傾向の相違が認められることを明らかにするために、主成分分析やランダムフォレストなどの統計手法を用い、その有効性を示した。次に、「宇治十帖」を対象に上記の項目を同様に分析したところ、採り上げたすべての項目において顕著な使用傾向の相違は認められなかった。つまり、「宇治十帖」における複数作者説を指示する積極的な根拠が認められず、「宇治十帖」の作者は他の諸巻の作者と同一である蓋然性が高いと考えられる。 また、より詳細に検討するために、語の共起頻度などにおけるn-gramモデルを用いた分析を行うためのデータを構築している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文体という概念を規定すると考えられる諸要素について、統計的な手法をもって分析し、古くから『源氏物語』において複数作者説が論じられている「宇治十帖」と称される10巻についての研究が進捗した。
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今後の研究の推進方策 |
「宇治十帖」の直前の3巻である「匂宮三帖」においても複数作者説は論じられており、本年度と同様に分析を行う。ならびに、『源氏物語』全54巻の成立過程、すなわち成立論のついても、計量的な観点から検討を加える。また、n-gramモデルを用いた語の共起パターンの頻度なども分析項目として加え、より広い観点から分析を行う予定である。
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