研究概要 |
タンパク質問相互作用の解析は創薬の分子マーカー探索などに利用されてきたが、とりわけ近年では、この相互作用を制御(阻害もしくは誘導)できる分子が疾患を制御できる医薬品候補として注目を集めている。 たとえば、チロシンキナーゼ型受容体に分類される上皮成長因子受容体(EGFR)は、癌細胞に過剰発現していることが知られている。EGFRはリガンド依存的に二量体を形成して細胞内キナーゼドメインをリン酸化することで, シグナルを細胞内に伝達している。 このシグナルが、癌細胞の増殖や転移などに関与していることから、EGFRの二量体形成(同一分子間でのPP1)を阻害する分子や, リン酸化を遮断できる分子は医薬品候補としての利用が期待できる。 そこで、現在までの研究で開発した酵母細胞を用いたタンパク質アフィニティの自在な改変システムを活用して、受容体の自己リン酸化を特異的に認識できるPPIスクリーニング法を新たに確立することで、チロシンキナーゼ型受容体を標的としたシグナル伝達を阻害・誘導できる結合性分子をセレクションできるシステムの開発を目指した。 今までのシステムでは細胞質中に標的タンパク質を発現していた。しかし、EGFRを標的にする場合、細胞膜上に発現させる必要がある。そこで、標的タンパク質を細胞膜上に発現させても、今まで構築したシステムに支障が起こらないか確認実験を行った。その結果、標的タンパク質の発現方法を考察し、最適化する必要があることが分かった。また細胞膜上に発現させるときに使用する、脂質アンカーも標的タンパク質に最適なものを選ぶ必要があることが明らかになった。 同時に酵母細胞でヒトのEGFR全長を発現させて、シグナルを伝達させる事は難しいといった問題がある。そこで酵母細胞でEGFRの二量体化を模倣できる人工受容体の構築を行った。この系においては、現在、検討中である。
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