本研究では、「T細胞におけるDOCK8の機能とその制御機構」を解明することを目的とし、研究実施計画を遂行した。本年度は、以下のような成果を得た。 1) DOCK8 KOマウスでT細胞が著減するメカニズムを調べるため、野生型およびDOCK8 KOマウスより単離したナイーブCD4+T細胞を、野生型マウスに経静脈的に移入し、2週間後に生存性を比較したところ、両者に差は認められなかったことから、DOCK8 KOマウスでのT細胞著減は、T細胞以外の原因によることが示唆された。 2) T細胞の活性化やその抑制に関わる免疫制御システムにおけるDOCK8の役割を調べるため、Myelin Oligodendrocyte Glycoprotein (MOG)を認識するT細胞受容体(TCR)を発現する、2D2トランスジェニック(Tg)マウスとDOCK8 KOマウスを交配したマウスを樹立した。始めに、野生型およびDOCK8欠損2D2TgマウスからCD4+T細胞を単離し、MOGペプチドの存在下で、Th1およびTh17細胞へと分化させたところ、DOCK8欠損エフェクターCD4+T細胞は、MOGペプチドに対して、野生型エフェクターCD4+T細胞と遜色ない増殖応答やサイトカイン産生を示した。次に、野生型およびDOCK8欠損2D2TgエフェクターCD4+T細胞を、野生型マウスに移入し、EAE発症に及ぼすDOCK8欠損の影響を解析した。その結果、DOCK8欠損マウスより準備したCD4+T細胞を野生型マウスに移入しても疾患発症を惹起できないことを見いだした。 3) OTII TCRを発現する野生型およびDOCK8 KOマウスから単離したCD4+T細胞を、様々な培養条件下においてOVAペプチドで刺激したところ、ヘルパーT細胞への分化能に、DOCI (8欠損の影響は認められなかった。 4) DOCK8 DHR-1ドメインのリコンビナントタンパク質を作製し、種々のリン脂質との結合アッセイを行った。今後は、DHR-1ドメインを欠損したDOCK8変異体を細胞株に発現させ、遊走などの挙動を解析することで機能的意義を明らかにする。
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