本研究では、申請者が独自に開発した遺伝子改変マウスを用いて、免疫学はもちろん、生化学・細胞生物学・分子イメージングと言ったアプローチを駆使して、「T細胞におけるDOCK8の機能とその制御機構」を解明することを目的とした。申請者はDOCK8を欠損したT細胞を野生型マウスに移入しても、中枢神経系への浸潤が認められず、その結果EAEを発症しないことを明らかにした上で、移入したT細胞が中枢神経系に至る以前のステップで、その機能の維持に異常を生じていることを見いだした。また、野生型T細胞をDOCK8欠損マウスに移入した場合、野生型マウスの場合に比べ、EAE疾患が増悪することも明らかにした。この現象を詳しく調べたところ、移入したT細胞において、EAE発症に重要とされる分子の増加が見られた。当初の計画は順調に進み、本研究は論文化を目前とした段階へと到達した。今後、これらの興味深い現象について、メカニズムの詳細をさらに深く解析し、DOCK8の機能とその制御機構を解明することで、T細胞に起因する疾患の理解に貢献していきたいと考えている。
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