研究課題/領域番号 |
13J03883
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
松嵜 英也 上智大学, グローバル・スタディーズ研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 旧ソ連国際関係 / 政治学 / 国家の解体 / 労働 / 分離独立 / 紛争 / ロシア系住民 / 沿ドニエストル |
研究実績の概要 |
本課題は、ロシア系住民居住地域を対象として、多数派民族の「同化」に直面した時における少数民族の行動に関する研究である。本課題の特色は重工業化された地域としてのロシア系住民居住地域に着目し、労働関係の変容と分離の関連性を内政面から考察することにある。 2年目は、①昨年度にまとめた研究の公刊、②次の研究課題への取り組み、③資料収集を行った。①では、ソ連解体期のモルドヴァの沿ドニエストルで形成された労働集団合同評議会に関する論文(「ソ連邦の解体と事実上の国家の形成―労働集団合同評議会による沿ドニエストル共和国建設過程の解明―」)が、『国際政治』に掲載された。そして、他のロシア系住民居住地域との若干の比較を取り入れて、沿ドニエストル紛争の発生に関する論文(モルドヴァにおける沿ドニエストル紛争発生の再考―安全保障のジレンマを手掛かりに―)が『上智ヨーロッパ研究』に掲載された。②では、分離紛争後の沿ドニエストルを中心として、事実上の国家の存続や「凍結された紛争」の持続について研究を進めた。ここでは、沿ドニエストルの内政だけではなく、外部介入と事実上の国家の関係性を考察するために、両者が相互作用する和平交渉の展開を理解することに力点を置いた。そして、ロシア、ウクライナ、OSCE等の外部アクターが協働して紛争を管理する外部介入の形態、「仲介者連合」の知見を導き出した。その一部の研究成果は、他大学の若手研究者とのワークショップや学会報告を通じ、次年度に学術誌への掲載が決まっている。③では、ウプサラ大学の国際会議において権力分有に関する報告を聞き、本課題の比較分析を自治選択の観点から発展させることを確認した。また、これらを考察するために、ウクライナのキエフでソ連解体期のクリミアに関する資料収集を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初採択された時に対象とした事例の中で、唯一分離したのは、沿ドニエストルだけである。そのため、労働と分離との関係は、学会誌への研究発表によって、概ね課題を達成したと考えられる。ただし、労働集団合同評議会は、他事例で観察されていないか、否かという問題は残っているため、最終年度に主にクリミアを事例に分析したい。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度では、最優先課題として、自治選択の観点から、沿ドニエストルとクリミアの比較分析を行う。その分析において、労働と少数民族の分離に関する研究を完成させたい。第2に、これまでの研究の発展として、本年度から研究に着手した、事実上の国家の存続に関して、特に仲介者連合の役割に着目して、研究を進める予定である。
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