研究課題/領域番号 |
13J03892
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
水谷 剛士 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 液中プラズマ法 / ナノ粒子 / 金 / 酸化チタン |
研究概要 |
本研究では液中プラズマ法を用いてナノ複合材料を作製する技術を確立し、それを基に触媒作製を行い、さらにその触媒活性を評価することを目的としている。本年度は、塩酸、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウムのそれぞれの溶液にて液中プラズマによる金ナノ粒子の作製を行い、その吸収スペクトルをIin-situ UV-Visで測定し解析することで、金ナノ粒子の粒径や溶液中の濃度の変化を見積もった。その結果、どの溶液においてもプラズマ相から直接粒子の状態で形成することが示唆された。またこの時に得られた粒径や濃度の情報から、粒径を制御する指針を得ることができた。 液中プラズマ法を用いて作製する触媒試料として金ナノ粒子と酸化チタンの複合材料を選択した。この材料は金ナノ粒子が局在表面プラズモン共鳴することで可視光により有機物を分解する光触媒である。ペルオキソチタン溶液を加熱して作ったチタン含有ゲル溶液に液中プラズマ法を適用し、得られた金ナノ粒子含有ゲルを乾燥、焼成することで金ナノ粒子含有酸化チタンを作製した。作製された金ナノ粒子含有酸化チタン粉末の結晶構造、光学応答、表面および内部の化学状態をXRD、UV-Vis、XPSおよびXAFSを用いて明らかにした。XRDの結果から、金ナノ粒子の結晶子径は20nm程度であることがわかった。また焼成温度が低い(400度)場合、得られた酸化チタンの格子が収縮していた。この格子収縮によって従来法で作製した材料と比べ特異な触媒反応が期待できる。UV-Visの結果では金ナノ粒子に起因するプラズモン共鳴のピークは水溶液中での525nmから630nmにシフトしていた。このシフトは金ナノ粒子が酸化チタンの結晶中に取り込まれていることを示唆している。XPSとXAFSの結果から、表面の金ナノ粒子は酸化チタンと相互作用しているが、内部の金ナノ粒子は金属状態であった。以上の結果から、酸化チタンの構造中に金属状態の金ナノ粒子が取り込まれた試料が作製されたことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はin-situ UV-Visを用いて溶液中の金ナノ粒子の粒径や濃度を見積もることを可能とし、粒子形成のメカニズム解明を行える環境が整ったといえる。またチタン含有ゲル溶液中に液中プラズマ法を適用することで金ナノ粒子と酸化チタンの複合材料の作製も可能となっため、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度中に行った研究から、液中プラズマ法においてはプラズマ相からナノ粒子が直接形成されていることが示唆され、その粒径は溶液の種類によって異なることが分かった。今後は作製時のパラメータをさらに精査することで、その粒子形成メカニズムを解明する。解明した粒子形成メカニズムを元に、粒径等の異なった金ナノ粒子と酸化チタンの複合材料を作製し、それらの触媒活性を評価する。その結果を元に、金ナノ粒子を含有した酸化チタン光触媒の反応モデルを立て、より活性の高い試料の作製を目指す。
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