研究課題/領域番号 |
13J03892
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
水谷 剛士 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 液中プラズマ法 / ナノ粒子 / 金 / 酸化チタン |
研究実績の概要 |
本研究では液中プラズマ法を用いてナノ複合材料を作製する技術を確立し、それを基に触媒作製を行い、さらにその触媒活性を評価することを目的としている。作製する触媒として金ナノ粒子と酸化チタンの複合材料を選択した。この材料は、金ナノ粒子が局在表面プラズモン共鳴によって約520nmの波長の光を吸収することを利用した、可視光で有機物を分解する酸化チタン触媒である。従来法と比べ、作製の際に用いる塩素や界面活性剤などの不純物が少ないという特徴があり、高い触媒活性を持った材料が作製可能となることを期待している。 昨年度までに金ナノ粒子のコロイド溶液の吸収スペクトルを解析することで、金ナノ粒子の粒径や溶液中の濃度を見積もる手法を確立した。その手法をもとに形成される金ナノ粒子の粒子径が放電維持時の電圧によって変化し、それが電極間距離によって制御できることを明らかにした。また金の供給量は基本的には電流量に比例し、周波数やパルス幅を大きくすることで時間当たりの作製量を増やすことが可能であることも明らかにした。 昨年度の研究で液中プラズマ法で作製した金ナノ粒子は、その粒子径や安定性が用いる電解質の種類によって異なることがわかっていた。今年度は粒子径の時間変化を観測することで、金ナノ粒子がNaCl溶液中ではオストワルト熟成によって粒子径が成長していくことを明らかにし、NaCl濃度を1, 5, 10 mMとしたときの金ナノ粒子の平衡な粒子径を求めた。一方でNaOH溶液を用いた場合は、作製してから一時間程度は粒子径の成長や粒子同士の凝集がほとんどないことも見出した。 昨年度に作製した金ナノ粒子含有酸化チタンの粉末の光触媒活性を調べるために、50 vol%のエタノール水溶液の分解実験を行ったところ、水が分解されたことにより発生した水素に由来すると考えられるピークが極僅かに検出されたため、水分解の活性を持っていると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナノ複合材料を作製する技術を確立するということは本研究の目的の一つであり、その観点においてプラズマ形成時の粒子形成のメカニズムを解明することは非常に重要である。本年度得られた、粒子径が電極間距離に大きく依存するという結果から、プラズマ形成時に電極間に発生するバブルのサイズが粒子径を決定するというモデルを立てることができた。これは複合材料作製時においても重要な知見であるといえる。 形成された金ナノ粒子の安定性に関しては、長期的な粒子の分散を保つためだけであれば添加剤にNaClを用いることが適しているが、塩素イオンによって粒子成長が起きてしまうことが明らかとなり、複合材料の作製においてはNaOHなどの塩素を含まない電解質を用いるべきであることがわかった。 作製した金ナノ粒子含有酸化チタンの光触媒活性評価に関しては、水分解反応に由来すると考えられる水素が発生していることを検出することができた。しかし発生量が極めて僅かであったため、担持量や粒子径の最適化が今後の課題である。 以上の理由から本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究で液中プラズマ法による金ナノ粒子の粒子成長過程についてのモデルを立てることができた。今後は、電極からの原子供給がどのようなメカニズムで起きているかを明らかにする予定である。現在のところ、原子の供給はジュール加熱か水素プラズマ-金属反応のどちらかによって電極が溶解することで起きていると考えており、電極からの原子供給量の元素依存性を調べることで、どちらであるかを明らかにする予定である。 現在作製しているナノ複合材料である、金ナノ粒子含有酸化チタンの光触媒反応による水分解活性の評価については、実験系の最適化を行い水素の発生量を定量評価する。またこの材料とは別に、市販されている酸化チタン粉末を分散させた溶液中で液中プラズマ法による金ナノ粒子の作製を行い、金ナノ粒子を酸化チタン表面上に担持した試料を作製する。 含侵法や光析出法で作製した金ナノ粒子担持触媒に対しての既往の研究結果と、本研究で作製した金ナノ粒子担持触媒の結果を比較することで液中プラズマ法の優位性を示したい。
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