研究課題/領域番号 |
13J03895
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
提嶋 佳生 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | ブロック共重合体 / ナノ相分離構造 / イオン性相互作用 / ナノポーラス構造 |
研究概要 |
我々はこれまでにブロック共重合体が形成するナノ相分離構造の特定相に、配位結合によって金属塩を導入したハイブリッドより、金属塩を除去することでナノポーラス膜を調製する手法を開発した。一方、我々は最近、ジブロック共重合体のバルク試料に酸処理を施し、イオン性相互作用を導入することで、簡便にらせん状シリンダー構造を誘起できることを見出した。そこで本年度は、これらの手法を組み合わせてイオン性低分子化合物添加によるらせん状シリンダー構造のナノポーラス構造の構築を試みた。 RAFT重合によってポリスチレン-6-ポリ4-ビニルピリジン(PS-P4VP, M_n=54000、PDI=1.22, φ_<ps>=0.60)を合成した。PS-P4VPと、シュウ酸のピリジン溶液をそれぞれ調製し、これらを混合し溶媒キャスト、熱処理によって試料を調製した。シュウ酸の添加量はP4VPブロックのモノマーユニットに対して5mol%~20mol%とした。また試料の薄膜を水に浸漬し、シュウ酸を除去することで構造のナノポーラス化も行った。試料の凝集構造は透過型電子顕微鏡(TEM)と小角X線散乱(SAXS)によって観察した。 ブレンド試料(シュウ酸添加量5mol%および10mol%)では、六方充填したP4VPシリンダー構造が観察されたものの、そのドメイン周期の増加が確認された。これはP4VPブロックがイオン化したことによって成分間反発力が増大したためと考えられる。さらに、シュウ酸添加量20mol%のブレンド試料のTEM観察ではらせん状にねじれたP4VPシリンダー相も観察された。さらにこの試料の散乱パターンを解析したところ、らせん状のドメインは通常のシリンダー構造に対して直交して配向していることも示唆された。さらに、水に浸漬した薄膜試料のTEM像では浸漬前の構造と比べるとそのコントラストは反転しており、シュウ酸を選択除去することでらせん状にねじれたナノポーラス構造が得られたことが分かった。以上の結果よりイオン性低分子化合物を添加することによっても、酸処理と同様にらせん状シリンダー構造を誘起できることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では、ブロック共重合体にイオン性低分子をブレンドする手法によってらせん状シリンダー構造を誘起することがわかった。そして、添加した低分子を除去することで、らせん状シリンダー構造を維持したままナノポーラス構造が得られることが明らかとなった。したがって、本年度の研究の目的として設定した、「らせん状ナノポーラス構造の構築」を達成できたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度に得られたらせん状のシリンダー構造とナノポーラス構造に関して、さらに高いレベルの構造解析を行い、構造構築原理を解明する予定である。そのため、今後はTEM観察技術を向上させ、3次元TEM観察の技術を習得する努力をしている。また、試料の調製条件を最適化し、SAXS測定による構造解析についても併行して行う予定である。 また今年度の結果より、ジブロック共重合体/低分子ブレンドでもあるブレンド比で共連続構造が発現することが分かった。今後はこの構造を利用して、本課題のもう一つの目標である「ジャイロイド状ナノポーラス構造の構築」にも取り組む予定である。
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