研究課題/領域番号 |
13J03895
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
提嶋 佳生 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2013 – 2015-03-31
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キーワード | ブロック共重合体 / ナノ相分離構造 / イオン性相互作用 / ナノポーラス構造 |
研究実績の概要 |
我々はこれまでにブロック共重合体が形成するナノ相分離構造の特定相に、配位結合によって金属塩を導入したハイブリッドより、金属塩を除去することでナノポーラス膜を調製する手法を開発した。一方、我々は最近、ジブロック共重合体のバルク試料に酸処理を施すことで、簡便にらせん状シリンダー構造を誘起できることを見出した。本年度は、これらの手法を組み合わせてらせん状シリンダー構造のナノポーラス構造の構築することを目的とた。 合成したPS-P4VPジブロック共重合体(Mn=54000、PDI=1.22, PSの体積分率=0.60)と、金属塩FeCl3のピリジン溶液をそれぞれ調製し、これらを混合し溶媒キャスト、熱アニールによってハイブリッド試料を調製した。金属塩の添加量はP4VPブロックのモノマーユニットに対して5~40mol%とした。 酸処理前のハイブリッド試料のTEM観察を行ったところ、すべての試料で六方充填したP4VP/FeCl3シリンダー構造が観察された。これに対して、酸処理後の金属塩添加量5~20mol%のハイブリッドでは通常のシリンダー構造に加えて、螺旋状シリンダー構造が形成されていることが確認された。このハイブリッドから金属塩を除去することができれば、最終目的とするらせん状シリンダー構造をもつナノポーラス構造が得られると考えられる。一方で、金属塩添加量30、40mol%の試料では螺旋状シリンダー構造がほとんど観察されず、構造が転移していないことがわかった。この結果より、配位結合に寄与していないP4VPブロックのピリジン環がイオン化されることによって、らせん状シリンダー構造が誘起していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、ブロック共重合体と金属塩のブレンドによるハイブリッド調製法と、溶媒処理方法によるらせん状シリンダー構造発現という、これまでの研究手法を組み合わせることで螺旋状シリンダー構造を持つブロック共重合体/金属塩ハイブリッドの調製を行い、一定の成果を得た。このハイブリッドから金属塩を除去することができれば、最終目的とするらせん状シリンダー構造をもつナノポーラス構造が得られると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果より、ブロック共重合体/金属塩ハイブリッドから溶媒処理によって金属塩を除去することでナノポーラス構造を調製する方法が確立されている。しかしながら、この手法によって得られるナノポーラス構造は、金属塩除去過程で空孔サイズ・形状にばらつきが生じてしまう。そのため、この手法を応用した場合に、らせん状シリンダー構造の規則性が乱れてしまうことが懸念される。したがって、この問題を解決するために空孔調製時の溶媒条件や、浸漬時間を変えることで、規則構造を維持したままナノポーラス構造を調製する方法について研究する。
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