研究課題/領域番号 |
13J03902
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
津川 靖基 東北大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 太陽風 / プラズマ波動 / かぐや衛星 / 月磁気異常 / ジオテイル衛星 / バウショック |
研究概要 |
本研究では、月周辺で観測される電磁波動の生成過程の全容を究明することで、太陽風と月磁気異常の相互作用現象の包括的理解へと発展させることを目的としている。そのためにまず、かぐや衛星のデータを用いた統計解析によって、月周辺で観測される数Hz帯の波動を特徴的なタイプに分類し、それらの特性と観測条件を明らかにした。波の平均強度が太陽風中の磁気異常付近で強いことから、それらの波が太陽風と磁気異常の相互作用を起源としていることを示した。得られた統計解析の結果と、プラズマの線形分散関係から導かれる観測スペクトルの変形の考察から、月の静止系で波の群速度ベクトルと太陽風ベクトルが打ち消され、波のエネルギーが停滞しているときに1Hz付近の狭帯域波動として観測されることを推測した。 さらにこの理論を確立するために、地球バウショック上流域でジオテイル衛星によって観測された類似する狭帯域波動について統計解析を行った。観測される周波数や波面ベクトルの依存性が月周辺の波動と類似することを明らかにし、狭帯域波動として観測されるエネルギーの停滞が、天体の大きさや磁場強度に依らない、一般的な現象であることを示した。 また、この理論から、観測される狭帯域波動の特性がエネルギーの停滞条件によってほぼ決まっており、波の励起過程を制限しないことが考えられる。励起過程の物理を知るには、観測スペクトルが変形していない、群速度ベクトルが太陽風に垂直に伝搬している波を調べる必要がある。そのような波は微弱で広帯域な右回り偏波として観測されていると考えられ、月と地球バウショックの周辺で観測されていることを確かめた。しかしそれらの波は周波数や伝搬角、振幅に明確な違いがあり、太陽風相互作用の過程の中で波動を励起する主要な物理が月と地球で異なることが推測される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時に計画していた、粒子データの解析や波動の成長・減衰率の計算には至っていないが、解析を進めることで初めて明らかになってきた波動の観測的特徴と、それに基づく励起から伝搬までの一連のシナリオを提案し、異なる領域でその理論の一般性を確かなものにしたことで、太陽風相互作用の物理理解を進めたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で明らかにした、月や地球バウショック周辺で観測されるホイッスラーモード波動の励起過程に要求される条件を満たすエネルギー源を特定するために、衛星で観測された粒子データの解析を行う。まずは波動スペクトルと粒子の速度分布の対応を明らかにし、波の成長や減衰を定量的に検証する。 また、本研究では数Hz帯のホイッスラーモード波動の急峻化が月周辺でのみ観測されることを明らかにした。月のダストや磁気異常帯の非一様性に起因する非線形発展である可能性が考えられ、ダストや磁気異常のモデル計算をもとに、それらの影響を評価する。
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