研究課題/領域番号 |
13J03929
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松田 さゆり 東北大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 素粒子実験 / ステライルニュートリノ / ニュートリノ振動 |
研究概要 |
本研究では、ニュートリノ検出器KamLAND(カムランド)の周辺に、強力な反電子ニュートリノ線源^<144>Ce-^<144>Pr(セリウム-プラセオジム)を設置し、弱い相互作用を起こさないステライルニュートリノが存在した場合に数メートルの距離で起こる反γ_eの短距離振動の観測を目指している。平成25年度は、線源の設置候補について実現可能性の検討、バックグラウンド評価を行い、設置場所を決定することを目標として定めていた。予想感度が最も高い候補は内部検出器周囲の水チェレンコフ検出器(外部検出器)である。現在の強度で2トンという大重量の線源を設置できるかという課題に関しては、強度計算を行った結果、上部の梁を補強すれば地震時にも耐久可能と判明した。また、外部検出器の純水は常に近隣の川へ排水されている。線源を格納する円柱容器を設置し、内部を純水で満たして定期的に循環し線量の確認を行うことで、汚染水の排水や放射線漏れを防止できるようなシステムを設計した。 本実験で生じる背景事象のうち、1. ^<144>Ceの娘核^<144>Prから生じるガンマ線、2. セリウム生成時に残留する不安定原子核による自発性核分裂、の影響について評価した。1. 信号である^<144>Prのベータ崩壊に対して0.7%の分岐比で放出される2.185MeVのガンマ線の影響を評価するためにフルシミュレーションを行った。反γ_eは時間空間相関を利用して識別しているが、線源由来のガンマ線が反γ_eとして誤識別された事象は10^<12>個の発生数に対して0事象だった。よって現在の設計で目標減衰長を達成していることがわかった。2. ^<144>Ceを使用済核燃料から抽出する際に微量に混入するキュリウム244(^<244>Cm)は自発性核分裂により中性子を多重生成、擬似的な時間差事象となる。^<244>Cmの予想混入量、1Ciの^<144>Ceに対して10^<-9>Ciを仮定すると信号に対して30%の背景事象を作ることがシミュレーションで明らかになった。^<244>Cmの正確な混入量を知るために感度の高い中性子検出器の準備を進めている。^<244>Cmが目標量以上含まれる場合に備えて線源保持容器内への遮蔽物の追加や、線源周囲の純水に中性子吸収反応を起こすホウ素10を溶解させるといった対策を進めている。平成25年度の研究により予想感度の高い外部検出器設置の実現可能性が多いに高まった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
75kCiという強力な線源を坑内へ運搬・設置した実績がなく、当初は実現可能かが不明瞭であった。検出器の耐久強度や放射線漏れ防止策等を一つ一つ検討した結果、予想感度が最も高い場所に設置できる可能性が高いことを示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
線源運搬容器の認証には年単位の時間を要することがあり、実験計画の大幅な見直しを迫られる可能性がある。そこで、強力な反ニュートリノ源としてサイクロトロン加速器を使用する計画についても本実験と並行して進めていく。
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