研究概要 |
申請者はσ-対称長鎖ジオールの非対称化に関してより広範な基質を合成し、基質認識型触媒の認識能の限界に挑戦している。特に、これまでの成功で極めて重要な基質である四置換プロキラル炭素含有1,7-ジオール1において、置換基Rの嵩高さや官能基許容性及び類似構造をどこまで正確に識別するかは、今後の発展研究を行う上で重要な知見である。そこで置換基にR=TBDPSO(CH_2)_2、MeO(CH_2)_3を有する基質をそれぞれ合成し、触媒反応を行った。その結果、高収率と高立体選択性を保持していることが分かった。特にR=MeO(CH_2)_3のジオール体においては、四置換プロキラル炭素から伸びる3本の炭素鎖の違いは殆どなく、立体障害を利用する反応ではこの違いを見分けることはほぼ不可能であるが、基質認識型触媒ではそれぞれの炭素鎖を明確に識別し、プロS側の水酸基を高度に識別していることが結果から分かる。また、NHNsの酸性プロトンがMe化された基質では大きく立体選択性が低下することからも、NHNs基は本反応に重要な置換基であり、基質-触媒間の水素結合がこの結果からも示唆される。一方、立体選択性が完全に消失しない理由としては、触媒が基質の1,4アミノアルコール構造だけではなく、1,7-ジオール構造、もしくはNs基と触媒ナフタレン部位との弱い相互作用の働きが影響しているものと考えている。これらの結果から、基質一般性の拡大もさることながらノシルアミド構造による精密な基質―触媒間相互作用、また1,4-アミノアルコール構造に由来したプロキラル炭素不斉識別に関する多くの情報が得られた。
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