研究実績の概要 |
σ-対称長鎖ジオールの非対称化に関する反応機構解析に取り組んだ。温度効果による変化をプロットすることでギブスエネルギー差を求めた。その結果ΔΔH ǂ= -3.03 (kcal/mol) となり、およそ水素結合1つ分の相互作用の差が見られた。またΔΔS ǂ= -5.5 (cal/mol・K) となり、プロS側の水酸基アシル化の遷移状態がプロR側のそれと比べて、よりエントロピーの要請が大きい。これはプロS側の水酸基アシル化の遷移状態では水素結合の組み合わせにより、より強固な配座をとることを示唆している。 またDFT計算から(S)-モノアシル体に至る遷移状態が最安定構造とわかり、4点の水素結合により遷移状態を安定化していた。これらの知見はこれまで想定していたπ-π相互作用に比べてより強い相互作用が関与しており、また反応の選択性をよく反映している。 次に四置換アレンジオールの非対称化についても検討を行った。四置換目置換基はiPrを用い、NsNHに高い認識能を有するβ-ナフチルアラニン誘導体を側鎖に持つ触媒を用いて反応を確認したところ、中程度ながら立体選択的にモノアシル体が得られた。一方1,4-アミノアルコール構造とは異なる距離の認識をどのように適応させていくのかが当面の課題となった。本研究室の触媒は認識側鎖部位にアミノ酸誘導体を用いており、認識パターンの微細な変更が容易である。一方距離認識の肝は基質認識部位から反応点までの距離が、触媒認識部位から触媒活性部位までの距離とよい一致を示す必要があることが経験的に理解されている。新規基本骨格の合成は完成に至らなかったが、合成に至る土台を作ったと考えている。
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