研究課題/領域番号 |
13J03998
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
渡邉 洋平 横浜国立大学, 大学院環境情報学府, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 暗号理論 / 情報理論的安全性 / 秘密分散法 / 暗号プロトコル / 認証 / 暗号 / 計算量的安全性 |
研究概要 |
平成25年度の研究方針として、任意の時刻で機能の"開始"を制御する暗号基礎技術(Timed-Release方式)についての研究、またそれに関連する情報理論的に安全なプロトコルについての研究、の2点に重点を置いて研究を行った。前者においては、まず、情報理論的安全性に基づくTimed-Release機能を有する暗号化、認証プロトコルにおける必要な秘密鍵長の下界を導出し、その下界を満たすような最適な構成法を考案し、既存の研究成果の完成度をあげることに成功した。更に、重要な暗号基礎技術の一つである秘密分散法について、Timed-Release機能を有する方式(Timed-Release秘密分散法と呼ぶ)を、情報理論的安全性に基づくもの、計算量的に基づくもの、それぞれを世界で初めて提案した。秘密分散法は幅広い応用が考えられているため、Timed-Release秘密分散法にも幅広い応用が期待できる。Timed-Release秘密分散法に関する研究成果は既に国内会議で発表しており、今後更に完成度をあげ、権威ある国際会議、また論文誌等に投稿予定である。これらの結果として、特に情報理論的に安全な"Timed-Release"方式における基礎研究が完成したといえ、今後本研究を進めていくにあたっての確かな土台が築けたといえる。後者においては、従来の基本的な情報理論的暗号技術を拡張したものとして、検証者が秘密鍵を必要としないブラインド認証方式、多人数モデルにおける相手認証方式、アグリゲート認証方式、匿名性・追跡性を有する認証方式についても、厳密な数理モデル化、安全性の定式化を行い、権威ある国際会議にて発表を行った。本研究目標は新たな方式を考案することであり、厳密に、また妥当に数理モデル化する必要があるため、この研究で得た"厳密に数理モデル化するノウハウ"を、今後本研究に活かしていく計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の当初の研究計画は、情報理論的安全性に基づくTimed-Release機能を有する暗号基礎技術の完成度の向上、また任意の時刻で"停止"を制御する暗号基礎技術"Timed-Revocable"方式について具体的な方式の考案・発表の2つであった。研究実績の概要にも示したように、前者の研究計画を達成することに成功した。また、後者の"Timed-Revocable"方式は新たな方式であり、その定義に不適切な点があるとこの先の本研究計画にかなりの影響が生ずるため、本年度は"Timed-Release"方式の基礎研究に特に重点を置いて研究を行った。計画とは異なってしまったものの、今年度の成果によって、後者の方針が明確となったので、「おおむね順調に進展している」との自己評価に至った。今年度の成果を踏まえ、早急に"Timed-Revocable"方式の考案・発表を行いたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、平成25年度の研究成果の完成度を更にあげた論文を権威ある国際会議、論文誌等に投稿・発表予定である。また、同研究成果を基に"Timed-Revocable"方式の考案・発表を行う計画である。具体的には、方式の数理モデル化、安全性の定式化、構成法の提案を行い、その成果を権威ある国際会議で発表する計画である。更に、"Timed-Release"方式、"Timed-Revocable"方式共に汎用的結合可能安全性という安全性を満たすかどうか検証し、満たしていない場合は満たしているような方式を再考する計画である。汎用的結合可能安全性を満たすことで、どのような結合、利用環境においても安全性を保証することが可能なため、より安全な暗号技術の構築が可能となる。
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