本年度は、①後白河院における音声・音楽の研究、②寺社・文庫における音楽資料の収集と分析、③これまでの研究成果の補訂及び統合、の三点を軸に研究を行った。 ①について、後白河院(1127~92)における音楽について、従来指摘されてきた今様のみならず、読経、念仏、講などの様々な「声」の次元から分析を行った。具体的には諸資料から後白河院に関する音楽関係資料を抽出し、これらを年次順に配列することによって相互に参照を可能とし、体系的にとらえようと試みた。これらの成果については論文にまとめた。またこの過程において、『平家物語』終局部に位置する「大原御幸」について史実とする史料を発見した。この成果については学会(中世文学会)で発表し、論文としてまとめた。 ②について、所属していた史料編纂所に多数の寺社・文庫資料(謄写本や写真帳など)が蔵されているため、これらについて調査を行った。特に醍醐寺、仁和寺、吉野水分神社、書陵部(伏見宮家、九条家、柳原家ほか)等から新資料を発見することができた。 ③について、まずこれまでの研究成果の見直しを行った。史料編纂所に多数所蔵される文献によって、これまで遂行してきた研究についても、善本ではないものを使用していたケースや、見落としていた資料が多数存在していたケースがあることがわかった。この事態をふまえ、史料編纂所の資料について書誌をとり、諸記録の善本を確定させるとともに、これらとこれまで集めてきたデータとの照合を行った。その上で2014年度、2015年度で学会発表を行い、かつ成稿化していないものについて、論文としてまとめた。
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