研究課題
内分泌撹乱物質であるビスフェノールA(BPA)が小胞体における複数のジスルフィド結合形成経路の中でEro1-PDI経路のみを選択的に阻害するということを系統的な機能解析によって明らかにし、J. Biol. Chem.に採択された。さらにPDIを酸化する酵素Ero1の生理活性発現について、これまでにEro1内4つのregulatoryシステインによって厳密に活性が制御されていることがわかっているが、他にも11個のシステインを持っており、それらが機能に影響を及ぼしているか不明であった。今回Ero1がPDIを酸化する過程においてCys208/Cys241ジスルフィド結合が還元されることをSDS-PAGEや質量分析によって発見し、Cys208/Cys241ジスルフィド結合欠損Ero1変異体は野生型よりも高いPDI酸化活性を示した。実際、このEro1変異体を過剰発現させた細胞は、小胞体内で過剰の過酸化水素を蓄積するため、増殖速度や生存率共に大きく減少した。以上の結果よりEro1のCys208/Cys241による新規生理活性制御機構を解明し、小胞体における酸化還元環境の恒常性維持機構に関する重要な知見を得、Free Radic Biol Med.に採択された。また他にFree Radic Biol Med.、生物物理誌、実験医学、Current Protocals in Protein Scienceの総説の依頼を受け執筆した。さらに翌年度以降の実験計画として、高速AFMを用いたPDIによるフォールディング中間体の認識機構の解明を進めており、現在研究途中ではあるが国際会議の発表においてポスター賞を受賞するなど高い評価を受けており、翌年度中に国際一流誌に投稿する予定である。
2: おおむね順調に進展している
酸化的フォールディングを触媒し、小胞体に存在する酵素群の機能や構造解析により、当該分野における多くの知見の獲得に至った。その成果として、原著論文3報(そのうち申請者がファーストオーサーとして2報)、英文総説3報(そのうち申請者がファーストオーサーとして2報)、和文総説2報としてまとめた。現在までに得られた新たな知見を基に、更に小胞体に存在する酵素群の機能や構造の解明が期待できる。
PDIによる基質のフォールディング中間状態の認識について、当初NMR解析を主軸に進めていく予定であったが、基質の各アミノ酸残基の帰属が困難であったため、現在X線小角散乱法や高速AFMを用いた、1分子情報や溶液構造情報の取得を進めている。その結果として、PDIがフォールディングを触媒すると考えられる高速AFM画像の取得につながっており、生化学的手法の追加情報を基に、本年度中に国際一流誌に投稿予定である。従って、当初のアプローチとは違うが、本申請目的である「PDIによる基質のフォールディング中間状態の認識」に関する知見取得や申請内容の遂行には全く問題ないと考える。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 図書 (2件) 備考 (1件)
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