研究課題/領域番号 |
13J04036
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
杉田 智哉 名古屋大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | ペプチドビーコン / ペプチドアレイ / ホモジーニアス検出 / 抗体 |
研究概要 |
本研究では、蛍光ラベル化抗体結合ペプチド(Atto655-NKFRGKYk)とC末端にトリプトファンを付加した相補クエンチペプチド(DIAVEWES-GWx)を1分子として合成したペプチドビーコンを開発し、抗体非存在下ではモレキュラービーコンの様に閉じた構造をとり消光する一方で、抗体存在下では開いた構造をとるため蛍光を発するペプチドビーコンの開発を目指した。 まず、1分子ビーコンを合成する前に、効率的な消光を誘導させるため、相補ペプチドのC末端に付加させるトリプトファンの数を検討した。DIAVEWESのC末端にトリプトファンを1~5残基付加した相補クエンチペプチドをペプチドアレイ上に合成し、Atto655-NKFRGKYKの消光度を評価した。その結果、トリプトファンを4残基付加したDIAVEWES-GWWWWが最も効率的に消光させることができることがわかった。次にAtto655-NKFRGKYKとDIAVEWES-GWWWWを、GGSリンカーを介して1分子として合成したペプチドビーコン(Atto655-NKFRGKYK-(GGS)_2-DIAVEWES-GWWWW)を作製し、このペプチドビーコンが抗体検出可能かを検討した。 まず、ペプチドビーコンがどのような相互作用によって閉じた構造をとっており、どのような条件下で開くかを調べるために、様々なバッファー条件下(pH、塩、Tween)における蛍光強度変化を測定した。pH、塩、Tweenのみを添加したバッファー中では、蛍光強度の変化は見られなかった一方で、pH4.0以下かつTween混在下において蛍光強度の上昇が確認された。したがって、このペプチドビーコンは、静電的相互作用と疎水性相互作用によって閉じた構造を有しており、その相互作用が弱くなるバッファー条件下で開くことが分かった。 このペプチドビーコンを用いて、様々なバッファー条件下での抗体検出を実施した。その結果、pH3.0の溶液中にて抗体を検出することができ、その検出限界は50nMであった。以上の結果より、本研究でデザインしたペプチドビーコンは、抗体非存在下では閑じた構造をとり消光するが、抗体存在下では開いた構造をとり蛍光を発することが示され、抗体のホモジーニアス検出に有用であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記載した1年目までの予定以上進展しているが、新たな問題点も生じており②とした。すでに、抗体を検出可能なペプチドビーコンの開発に成功した点で大きな成果を得ている。一方で、現状の抗体検出では、酸性条件が必要であるという問題点も新たに生じている。現在は、ペプチド配列の最適化(電荷を含むアミノ酸の置換など)により、問題解決を図っている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、抗体を検出可能なペプチドビーコンの開発に成功した。抗体検出をするための条件として、酸性条件が必要であるという問題点も新たに生じているが、ペプチド配列の最適化により解決できると考えている。実際に、配列の最適化(電荷を含むアミノ酸の置換)を実施しており、中性環境下でも検出できる可能性を示す結果が得られ始めている。今後は、シグナル比の向上、中性条件下での抗体検出が可能なビーコンの最適化を実施する。最適化終了後、抗体産生細胞スクリーニングや病原タンパク質のホモジーニアス検出を実際に行う予定である。
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