研究課題
これまでの研究で、酸素発生反応を高効率で触媒する鉄5核錯体を見出している。この錯体による酸素発生のメカニズムはDFT計算を基に提案していたが、計算で得られた結果をサポートする実験データが十分ではなかった。そこで、触媒反応サイクルで提案している中間体に関して実験的に評価した。具体的には、酸化剤の添加や電位をかけることによって錯体を酸化しその変化の過程を吸収スペクトルにより追跡した。さらに酸化体の一部を単離しメスバウアー測定を行うことにより、DFT計算によって得られた計算値との比較を行った。その結果、計算によって示唆された鉄のスピン状態はメスバウアー測定や吸収スペクトルなどの実験結果から帰属したものと完全に一致することが分かった。すなわち、計算によって提案している反応メカニズムの一部が実験的に確かであることが分かった。鉄5核錯体は、高い触媒活性を有するものの水の酸化に必要な電圧が比較的高い点が課題である。そこで、錯体の電荷上昇を抑えて酸素発生反応の過電圧を下げるため、解離性プロトンを有する配位子を導入した新規鉄5核錯体を合成しその触媒機能に関して調査を行っている。これまでの研究では、錯体のプロトン解離挙動と酸化還元特性を明らかにした。本年度は、電気化学実験で観測された触媒電流が、錯体が触媒する酸素発生に由来するかどうかを調べるため、酢酸緩衝溶液中で定電位電解を行い発生する酸素を酸素センサーを用いて調査した。錯体の溶液に8時間電位を印加し反応セル内の酸素濃度を測定した結果、錯体の触媒反応に由来する酸素の発生を確認した。また、これまでの鉄5核錯体よりも小さな電圧でも触媒として働くことが明らかとなり、目的通りに低過電圧で駆動する酸素発生触媒であることが明らかとなった。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nature
巻: 530 ページ: 465-468
10.1038/nature16529
https://www.ims.ac.jp/news/2016/02/12_3396.html
http://phys.org/news/2016-02-pentanuclear-iron-catalyst-oxidizes.html
http://www.nature.com/articles/nenergy201623