研究課題/領域番号 |
13J04051
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
岩田 好美 同志社大学, 文化情報学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 積層構造 / 形態素 / 詞章 / 計量文献学 / リレーショナルデータベース / 能楽 |
研究概要 |
能楽三要素(詞章[台本]、囃子[音曲]、舞[動作])の分析手法の検討と能楽のリレーショナルデータベース(RDB)の基本設計・試験実装を2年間で行う事を目的とする。今年度の前半は三要素の中で詞章、そして地拍子を中心にRDBの基本設計を行った。また詞章と地拍子に関する分析手法の検討では、詞章と地拍子のデータが統計的手法を用いた分析に応用できるように考慮した。RDBの基本設計は能楽研究者横道萬里雄氏が考案した積層構造を元に作成する。また設計時に形態素データと漢字仮名交じりのテキストデータだけでなく仮名データを含めている。なぜならば形態素解析は詞章の特徴を計量的に見るために必須であり、仮名データは地拍子の拍数を確認するために必要だからである。 今年度の発表は能楽詞章に対して統計的手法を用いた作品の特徴抽出について行った。この発表では、日本古典文学大系『謡曲集』をテキストに用いて、1)データベースの概要を説明し、2)テキストデータを形態素に分け、品詞毎にタグ付けしている形態素データを基に出現頻度を算出し、3)とりわけ能作者世阿弥の作品に出て来る特徴語の抽出を行った。なお、この研究を遂行するにあたって、補助金を用いて能楽関連書籍を購入している。 今年度の後半は、能楽詞章[観世流200曲、宝生流(181曲+蘭曲24曲)、金春流修羅物(16曲)]のテキストデータ(漢字仮名交じりデータと仮名データ)の作成を行った。仮名データを作成する上で、最初に各原本に記述してある仮名に基づき作成した。原本に記載されていない仮名については『謡曲大観』に記載された仮名を充てている。今年度の補助金は主に上記の研究を遂行するための文献購入費とデータ作成費に充てられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は能楽の詞章と地拍子を中心としたリレーショナルデータベース(RDB)の基本設計・分析手法の検討を行った。詞章について、従来の能楽研究だけでなく、客観的データに基づく統計的手法を用いる研究からもアプローチできるようなRDBの設計を行った。また同時並行で能楽詞章のテキストデータ(漢字仮名交じりデータと仮名データ)を作成した。Oracleを用いて能楽詞章RDBの構築を行う事ができたのでおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
舞と囃子の詳細な設計を行う。まず囃子の諸本と舞の型付資料の中でテキストデータ化が可能な部分の検討を行う。次に詞章と地拍子と舞と囃子のデータの整合性を持たせるように設計を行い構築し、その後試験実装を行う。 同時並行で今までテキストデータ化した詞章のRDBの構築を行っていく。異なる流派を集約して構築するため、最初に詞章の能用語について同じ意味でありながら流派や時代によって呼称の異なるものを統一する基準を作成する。次に詞章のテキストデータを形態素解析(MeCab)にかけて品詞のタグ付けし修正を行う。最後に正規化してDBの構築行っていく予定である。
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