謡曲データベースの基本設計・試験実装と分析手法の検討を2年間で行う事を目的とし、今年度は2点の研究を中心に取り組んだ。 1.囃子と舞の詳細な設計・構築 能の積層構造の「節」の中の「拍子合」部分は、どの譜が何拍にあたるという形でリズムの規則に従う必要がある(=地拍子)。この地拍子が謡と小鼓・大鼓・太鼓が組み合わさる。ここに整合性を持たせるように設計を行った。「拍子合」については、半拍16(8拍)でひと纏まりと考え16拍に分け、この部分の詞章を平仮名一文字ずつに分解して割り当てた。小鼓・大鼓・太鼓については16拍に合わせる形で符号化した。笛は「指付」、舞は「型付」の資料を元にテキストデータ化した。詞章・舞・囃子の全てを集約したデータベースの設計・構築を順調に行えた事は大きな成果であり、また今後の研究を進めていく上で重要であると考える。 2.語の出現頻度から能作者の特徴の検討 積層構造に形態素の構造を追加してデータベースを構築した事で品詞や単語の出現頻度を算出でき、計量的分析が行いやすくなった。そのため、今年度は能作者間の作品を比較し、作者の特徴を検討する発表を行った。この発表では、謡曲データベースから形態素に分解したデータを取り出し、単語の出現頻度から分析を行った。一方の作者にしか出てこない単語等をリスト化し、作者の特徴の有無を調査した結果、作者の特徴が現れている可能性のある語が見つかり分析手法が有効であると言える。 上記2点の研究を進めると同時に、昨年度から引き続き詞章の形態素データを作成した。また金春流や謡本の詞章計234曲のテキストデータ化(漢字仮名交じりデータと平仮名データ)を終了した。
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