減水環境で飼育したネッタイツメガエルは、水中環境では示さない腹側皮膚を介した水吸収を行うようになり、乾燥した環境に順応する可能性があることを1年目の研究で示した。さらに、減水環境で飼育するとAQPa2S mRNAおよびタンパク質の発現が確認された。そこで水棲無尾両生類の乾燥環境適応に最も重要であると考えられるAQPa2Sの転写調節機構の解明を目的として以下の実験を行った。減水環境または水中で飼育したネッタイツメガエルの大腿部皮膚をcollagenase 処理し、表皮と真皮を分離した。このうち表皮のみを液体窒素で凍結し、次世代シーケンサーMiseq (illumina)を用いたトランスクリプトーム解析を行った。その結果、減水環境において発現量が増加した203個の因子および発現量が低下した424個の因子を同定した。今後AQPa2Sの転写制御に関わる因子の同定が期待される。 共同研究者であるHillyard教授の研究室において陸棲の有尾両生類ブチイモリを用いて、腹側皮膚を介した水吸収機構の生理学的な解析を行った。その結果、他の水棲(アカハライモリ)・半水棲(シリケンイモリ)のイモリに対して、ブチイモリのみがホルモン投与に応答して、腹側皮膚を介した水吸収を行うこと示した。また、免疫組織学的な解析からAQPa2SはAVTに応答して最外顆粒細胞のアピカル側細胞膜に局在することを示した。これらの結果は、陸棲のブチイモリが多くの陸棲や樹上棲の無尾両生類と同様に、抗利尿ホルモン応答性AQPa2Sの局在を変化させることで、腹側皮膚から水を吸収して水恒常性を維持していることを示している。本研究により、有尾両生類が無尾両生類と同様の腹側皮膚型AQP(AQPa2S)を介した水吸収機構を有していることが示された。これは同時に、本水吸収機構の起源が無尾目と有尾目の共通の祖先にまで遡ることが出来ることを示している。
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