研究課題
本年度は,観察条件,試料作製条件の最適化による取得画像の信号対雑音比の向上,電子線励起可能な細胞内小器官の同定,そして細胞試料へのダメージ評価について調査した.本手法の分解能,観察可能深さは電子線の散乱及び侵入深さに依存する.これらは薄膜基板と試料の材質,電子線の加速電圧によって決まり,モンテカルロシミュレーションを用いて計算できる.シミュレーション結果と実験結果を基に,加速電圧,照射電流量,薄膜基板の膜厚,試料作製の条件を最適化し,高空間分解能かつ高コントラストな生きた細胞の自家蛍光画像の取得に成功した.これによりミトコンドリア,細胞核内部及び周辺の微細構造,脂肪滴,そして微細な細胞膜構造が観察できた.また固定した細胞の観察画像を用いて分解能評価を行った.細胞内微粒子のラインプロファイルの半値幅は100 nm程度であった.従って直径100 nm程度のプローブ径での非染色生体観察が行えたといえる.電子線励起可能な細胞小器官の同定では,有機蛍光色素で染色した細胞試料を蛍光顕微鏡と本手法を用いて観察し,比較することで示した. また,細胞試料へのダメージ評価では,蛍光染色した細胞に電子線を照射し,その後の経時変化を観察することで電子線照射によるダメージの有無を評価した.1点照射であれば,照射後も数時間生き続ける条件を見つけることができた.今後さらに,電子線をスキャンした場合や,そのスキャン方法によるダメージ評価が必要になるが,上記結果は本手法による生体観察及びその機能解明の可能性を示すものである.
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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