研究課題/領域番号 |
13J04083
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
工藤 誠也 岩手大学, 大学院連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 微量元素 / 移動分散 / 流域生態系 / ヒゲナガカワトビケラ / 生態系保全 |
研究概要 |
2013年度は、主な研究材料であるヒゲナガカワトビケラ(Stenopsyche marmorata)の他、各調査地点の河川水やそれに含まれる懸濁物質のサンプリングおよび微量元素分析を行った。本研究は、昆虫の生体内微量元素から各個体の発生地点を推定することで、集団内における個体の移動分散を効率的に評価する手法の確立を第一の目的としている。個体の移動分散は個体群構造を決定する重要な要素であり、野生動物を効果的に保全するためにはその把握が必須となるが、既存の手法では調査に多大な労力を要する。また、河川水等を対象とした微量元素分析は、それらの各元素濃度と昆虫の各元素濃度の関係性を明らかにし、流域生態系における物質循環構造を明らかにすることで、本手法成立の裏付けを得る意義がある。 今年度までの研究により、ヒゲナガカワトビケラでは幼虫・成虫ともに微量元素によって発生地をおよそ判別可能であることが分かった。特にダムより上流と下流とではほぼ完全な判別が可能であったが、ダムを越えて上流あるいは下流に移動したと推定される個体は見つからず、ダムによる個体群の分断が示唆された。 その他、今年度は調査地において大規模出水が頻発し得られたサンプルに限りがあったため、同一の手法を用いた海産魚類の産地判別・回遊履歴研究にも協力し、解析方法の検討を進めた。本手法は海産魚類に対しても有効であり、青森県沿岸の陸奥湾口で産卵するマダラ(Gadus macrocephalus)は主として太平洋から集まっていることを推定できた。この成果は平成26年度日本水産学会春季大会で発表した。今後この解析手法をフィードバックして、昆虫メタ個体群における移動分散の研究を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
調査地において大規模出水が頻発したため河川の増水が収束せず、サンプリングは滞ってしまった。また、上流域では、増水に伴う河床の攪乱により研究対象種の個体密度が激減し、サンプルを得られない調査地点もあった。現在は、入手できたサンプルから順次分析を行いつつ、解析方法の検討を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
2013年度において十分なサンプリングを行えなかった調査地点に重点をおき、改めてサンプルを集める必要がある。また、分析・解析を終えたものの発表に至っていないデータが多く存在するため、これらを取りまとめ精力的に発表する予定である。
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