1.日本のメダカは高緯度の集団ほど、オスの二次性徴形質の度合いが弱く、配偶行動も消極的である。これらはいずれも、高緯度ほど性淘汰圧が弱まることを示唆する。これらの結果を取りまとめた論文が、2015年発行のEvolutionary biology 誌に掲載された。また、このような形態と行動の緯度間変異をもたらす、野外の生態的要因および遺伝的基盤を明らかにするため、青森と沖縄の2集団を用いて以下の検証を行った。 2.メダカの二次性徴形質であるオスの鰭の長さはメスの選好性の対象となっていると仮説を立て検証を行った。性的二型を示す尻鰭と背鰭の長いオスほどメスから受け入れられやすいことが明らかになった。オスの長い鰭はこれまで受精率を上げるなど、オスの繁殖上の機能によるものと考えられてきたが本研究により、長い鰭の進化にはメスの選好性も寄与していることが初めて示された。これらの結果は、2014年発行のZoological science 誌に掲載された。 3.オスによるメスの独占の度合いは繁殖可能な雌雄の比率(実効性比)に影響を受けるため、実効性比の偏りは性淘汰圧の強さの決定要因の一つであると考えられている。青森と沖縄の2地点に調査地を設け、野外における年間の繁殖状況を追跡した。青森の集団は沖縄と比べて、繁殖可能な雌雄の出現が短期間に集中しており、実効性比の偏りは弱まった。現在、この結果を論文に取りまとめて投稿準備中である。 4.配偶行動の違いが知られている青森と沖縄の野生個体からF2を作出し、得られた約400個体について行動を観察し、さらに、個体ごとの遺伝子型を特定することで、オスの求愛の活動性とメスの選好性に関わる量的遺伝子座(QTL)の特定を試みた。予備的な解析では有意なQTLが同定できず、行動を定量化する指標を再検討して解析中である。
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