研究課題/領域番号 |
13J04103
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
永山 翔太 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 量子エラー訂正 / surface code / color code / 静的ロス / 歩留まり率 |
研究概要 |
本研究は、状態エラーと静的ロスの存在する環境下でのsurface codeを対象としている。本年度には、メルボルン大学のFowlerらが開発したトポロジカル量子符号のシミュレータ用ライブラリであるAutotuneを、本研究に利用可能なように拡張した。オリジナルのAutotuneは計算に利用する量子ビット全てに対して同時にエラー検出処理を行う「同期されたエラー訂正」しか行えず、状態エラーのみに対応している。本年度では、非同期にエラー検出処理を行えるようにし、静的ロスの存在によりエラー訂正回路が不均一になっている符号のシミュレーションを行えるようにした。テストシミュレーションにおいてエラー発生率が予測通りに抑制されていることを確認し、この拡張が正しく動作していることを確認した。これにより、surface codeを任意に拡張し、そのエラー訂正能力をシミュレーションによって計算できるようになった。 本研究の一貫として、surface codeの類似符号であるcolor codeの研究を開始した。Surface codeはXエラー訂正とZエラー訂正にそれぞれ独立したエラー訂正グラフを持ち、両者は双対関係にある。標準的なsurface codeでは、Xエラー訂正とZエラー訂正それぞれに二次元正方格子状のエラー訂正グラフを持つ。Color codeでは同じ形のグラフをXエラー訂正とZエラー訂正に利用する。状態エラー耐性のみを考える場合、surface codeの方がcolor codeよりも優れている。しかし、複雑なグラフを持つcolor codeは、静的ロスの発生によってグラフが切断しにくく、静的ロス耐性が高い可能性がある。Color codeは本研究の参考になると考え、平行して研究を始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では共同研究者と折半でAutotuneの拡張を行う事としていたが、担当区分を変更し、本研究代表者がほぼ全ての拡張を行う事にしたため。また、Autotuneの構造が複雑で、拡張のデバッグに時間がかかったため。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は予定通り進める。来年度には以下を実行する。 (1)静的ロスの存在するグラフでは、静的ロスの配置によってsurface codeのエラー訂正能力が異なってくる。そのためランダムで多様な静的ロスの配置パターンについてのシミュレーションを行い、統計処理して、各静的ロス確率におけるエラー訂正能力を算出する。 (2)特にエラー訂正能力が低い配置パターンについては廃棄する。廃棄基準を考察する。 (3)次数の不均一なグラフ生成ソフトウェアを実装し、(1)と同様のシミュレーションを行う。 (4)不均一なグラフとして具体的にどのようなグラフが適切であるかを、次数が均一なグラフのシミュレーション結果も混じえて考察する。 (5)「次数が均一な場合/不均一な場合」と「静的ロスが存在する場合/存在しない場合」の計4パターンについて、シミュレーション結果をまとめ、本研究の評価とする。
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