研究課題/領域番号 |
13J04116
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
松浦 史明 上智大学, 外国語学部, 特別研究員(PD)
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キーワード | 東南アジア史 / 前近代 / 刻文史料 / 王権 / 交易史 |
研究概要 |
本研究は、前近代東南アジアにおける交易ネットワークの発達と統治システムの変容を動態的に描き出すことで、東南アジア史に新たな時期区分を導入し、国家のあり方と変遷、およびその中で交易の占める位置とその展開を明らかにすることを目的としている。さらに、交易を単なるモノの交換行為としてだけでなく、宗教的紐帯を基礎とした権威付けの装置や地方化の一形態として捉えなおすことで、各地域の中心一周縁関係を含む統治システムとその変容を考察したい。そして、そこで明らかになった諸成果を、より広域の歴史展開に接続し、前近代東南アジア史像を再構築する。 初年度である本年度は、当該研究分野における全体的な資料状況の把握を主眼とし、同時に、分析手法確立のため考古学など周辺諸科学の方法論の習得を目指してきた。そのために、幅広い分野の研究書籍を購入した。海外調査は、タイとカンボジアの地方遺跡を中心に調査を実施し、碑文史料、考古遺物の現状確認と分析を行うとともに、建築学・美術史・考古学を専門とする同輩と活発な意見交換をした。また、アルバイトを雇って史料のデータベース化も進めた。これらのデータを統合し、遅滞なく検討するため、最新のノートパソコンを購入した。さらに、ジャワ・ビルマ・クメールの碑文研究者とともに「東南アジア刻文研究会」を開き、各フィールドでの史料状況やその特色について、碑文解釈の諸問題を含む詳細な議論を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
史料状況の把握については、各フィールドで様々な主体によるデータベース化作業が進行しており、有益な知見を多く得ることができた。周辺諸科学の方法論の習得は、当初から想定していたことではあるが、当然一朝一夕に成るものではなく、今後も研鑽の必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後も初年度での取り組みを継続するとともに、チャンパー(南ベトナム)などこれまで十分に調査することができなかった地域を中心に海外調査を行う予定である。また、地域横断的に刻文史料を扱うことを企図するなかで、同じ石に刻まれた史料とはいえ地域によりその特性に大小の違いがあり、単純比較することの困難さも具体的に明らかになってきた。今後、有益な議論を進めるための比較軸をどのように設定するかについて改めて検討する必要があり、漢籍等も援用しながら考察していくつもりである。
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