研究課題/領域番号 |
13J04117
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松尾 恭平 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 有機エレクトロニクス / 両極性有機半導体 / π共役化合物 / ホウ素 / ルイス酸 |
研究実績の概要 |
前年度に合成を達成した含ホウ素ナノグラフェン分子の有機エレクトロニクス材料への応用を検討した。得られた分子は熱安定性が高く、真空化での昇華精製も可能であった。そこで、真空蒸着法により有機薄膜トランジスタ素子を作製し、半導体特性の評価を行った。大気中の酸素や水の影響を避けるために真空化での測定を行ったところ、電界効果移動度は小さな値であったものの、興味深いことに正孔と電子のどちらもキャリアとして輸送することができる両極性特性を観測した。現在、電子を輸送するn型半導体材料の開発は有機エレクトロニクス分野で大きな課題となっており、今回の結果は、ホウ素の導入が新たなn型半導体材料の分子設計指針になり得ることを示している。さらに、分子のルイス酸性に着目し、溶液プロセスによるトランジスタ素子の作製を検討した。有機エレクトロニクスにおいて、溶液プロセスによる、低コスト、低温条件かつ大面積での素子作製は重要である。そのため新材料の開発には、半導体特性の向上だけでなく有機溶媒に対する溶解性の付与も重要である。そこで、ルイス塩基であるピリジンを除去可能な可溶性置換基として用いる新たなコンセプトによる溶液プロセスでの素子作製に取り組んだ。溶媒にピリジンを添加し、化合物を溶解させると、溶液中でピリジン錯体を形成する。この時、錯体はピリジンの配位によってπスタックを形成しにくくなるため高い溶解性を示す。この溶液を用いてスピンコートにより薄膜を作製したところ、錯体の薄膜が得られた。さらに得られた薄膜を加熱することで、揮発性のピリジンは除去され、元々の化合物の薄膜へと変換できる。得られた薄膜上に金電極を蒸着し有機トランジスタ素子を作製し半導体特性を評価したところp型のFET特性が観測された。この結果から、含ホウ素ナノグラフェン分子が潜在的な可溶性有機半導体材料であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目的としていた、含ホウ素ナノグラフェン分子の有機エレクトロニクスへの応用研究を進めることができた。また、ホウ素原子導入の一つの特長として、両極性電荷輸送特性を見出すことができ、さらなる研究の発展のきっかけをつかむことができた。また有機エレクトロニクス分野の大きな課題の一つである溶液プロセスによる素子作製において、ホウ素原子のルイス酸性を用いるという独自の発想で新たなコンセプトを示すことができたことは、ホウ素の特長を活かした材料開発を大いに前進させたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
パラジウム触媒を用いたクロスカップリング反応を駆使して、現在得られている骨格を様々に修飾し、新たな機能の発現を目指す。まず、ピリジンなどのルイス塩基を導入し自己集積化させ、新たな超分子システムの構築を目指す。また、ホウ素錯体の光解離による二重発光性に注目し、外部刺激により発光色が変化する新たな蛍光分子の開発を行う。
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