研究課題/領域番号 |
13J04118
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
冨田 恭子 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アデノウイルスベクター / 免疫寛容 / 肝臓 / 免疫応答 |
研究実績の概要 |
本研究では、外来抗原に対する免疫寛容を誘導しやすいという肝臓の特徴的な性質に着目し、Adベクターによる肝臓特異的な遺伝子導入を行うことで搭載遺伝子産物に対する免疫応答を抑制、ひいては免疫寛容を積極的に誘導することで、長期的な遺伝子発現を実現可能なAdベクターを開発することを目指している。 昨年度までの検討により、Adベクターの搭載遺伝子(β-gal)をAHAプロモーターにより肝臓特異的に発現させるとβ-galに対する免疫応答が誘導されないことが明らかとなった。これが、β-galに対する免疫寛容の成立によるものかどうかを確認するため、追加免疫実験を行った。すなわち、Ad-AHA-LacZを生体に投与することによりβ-galに対する免疫寛容が誘導されていれば、追加免疫を行っても抗β-gal免疫応答は誘導されないと考えられる。初回免疫としてこれまで用いてきたAdベクターを投与し、その後追加免疫としてβ-galタンパク質をフロイントの完全アジュバントとともに背部皮下投与した。マウスから経時的に血清を回収し、ELISA法にてβ-gal特異的な抗体産生を評価したところ、Ad-AHA-LacZ投与群では、Adベクター投与4週間後までは抗β-gal抗体の産生は認められなかったが、追加免疫の2週間後からわずかながら抗β-gal抗体の産生が認められ、その2週間後にはさらに抗β-gal抗体価が上昇した。また、β-galに対してnaiveな状態であったPBS投与群においてもβ-galタンパク免疫によりAd-AHA-LacZ投与群と同程度の抗体産生が認められたため、Ad-AHA-LacZ投与群ではβ-galに対してnaiveな状態に保たれていただけであり、免疫寛容が成立していたわけではないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に得られた結果を元に、目的の事象の解明のために複数のアプローチ方法を考えた。条件検討として基礎となるデータの取得も十分に行った上で新たな実験系の構築を行うことができた。検討の結果は研究課題を達成するためには理想的なものではなかったが、新たな知見として、今後別の観点からの発展が期待できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の検討により、Ad-AHA-LacZ投与では、β-galに対する免疫応答が抑制されていただけであり、β-galに対する免疫寛容が成立していたわけではないことが明らかとなった。今後は、Adベクターの搭載遺伝子を肝臓特異的プロモーター制御下で発現させることにより、搭載遺伝子産物に対する免疫応答が誘導されないメカニズムを明らかとするため、Ad-AHA-LacZ投与後の肝臓におけるβ-gal発現細胞の詳細な解析や、それらの細胞の抗原提示様式に着目して検討を進めていく予定である。一方で、各種免疫シグナルノックアウトマウスに本Adベクターを投与することで、搭載遺伝子に対する免疫応答に変化が見られるか検討を行い、どういったメカニズムが肝臓での免疫応答を制御しているのかを明らかにしていく予定である。予備的な検討ではあるが、ある免疫シグナルの受容体ノックアウトマウスにAd-AHA-LacZを投与すると、搭載遺伝子産物に対する抗体産生が認められることが明らかとしている。今後はこのシグナル経路にも着目して、Adベクターの搭載遺伝子に対する獲得免疫の誘導について検討を進めていく予定である。
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