研究課題/領域番号 |
13J04135
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研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
谷津 遼平 総合研究大学院大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 温度依存性性決定 / TRP / TSD / アメリカアリゲーター |
研究実績の概要 |
現在までの研究で、ワニTRPV4チャネルがワニ雄誘導温度である33度付近で活性化することを見出し、またTRPV4を薬剤操作する事により雄性分化シグナルカスケードの誘導を抑制される事を見いだしている。厳密に、ワニの生殖腺に置いて、amh、sox9、そしてdmrt1、いずれも雄性分に重要な遺伝子の発現がdosage dependentに抑制される。反対に雌性分化に重要な遺伝子、cyp19a1、foxl2の発現はチャネル活性状態に影響されない事を見出した。結果、生殖腺組織自体は性転換が見れなかったが、雄に置ける卵管の形成がみられ性発生に影響が見られた。上記のデータは論文にまとめられ上げ、現在PNASに投稿中である。また、各性発生ステージにおいて生殖腺のRNA-seq解析を行った結果、温度変動によりヒストン修復因子に発現変動が有る事が判明した。このヒストン修復因子は今まで性発生と関連性が他の生物では報告されていず、ワニが初めてであると思われる。RNA-seqの基礎データ、またヒストン修復をターゲットにした免疫染色、ChIPアッセイ、そして修復因子の定量pcrなどの結果をまとめた論文も近く投稿予定である。また、ワニを用いた実験に基づき、同様の実験をクサガメにて行い、ワニと同じTRPV4チャネルにより性決定、分化への影響を調べた。組織学的には変異が見られず、TSDにおけるTRPV4の機能の保存性を確認がされなかった一方、別のTRPチャネルサブタイプを活性化する事により性転換らしき傾向がみられ、TSDメカニズムにおける多様性の可能性を見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に置いては、カメのモデルとして使われるアカミミガメを用いた実験を計画していたが、入手困難によりクサガメを用いた研究に変更し、そのためクサガメにはない基礎データの蓄積に時間を失った。器官培養の実験も企画したが、解剖の困難さ等により、良い結果は得られなかった。また、メダカを用いた実験はワニやカメの実験の方を優先したため、予定が多少遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
ワニの研究で得られた結果をカメやメダカに応用する予定である。主にワニを用いた実験に基づき、同様の実験をクサガを行った結果、ワニとは別のTRPチャネルサブタイプを活性化する事により性転換らしき傾向がみられた。今年度はこの新たなTRPチャネルサブタイプを中心にカメの温度依存型性決定機構を調べ、ワニと一連の実験を予定している。また、発現解析などにより、ワニとの比較解析も行う予定である。
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