研究課題/領域番号 |
13J04142
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
下岡 孝明 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 量子情報 / 磁気測定 |
研究概要 |
本研究では単一格子欠陥(nitrogen-vacancy (NV)中心)中の電子スピンと核スピンを用いた微小磁場測定を目指している。このような量子系を用いた測定において量子系の初期化、周囲からのノイズを抑えた測定は共に重要な意味を持つ。前年度の研究ではこれらの課題に実験、理論の両面から取り組んだ。以下にその報告をする。 (1)量子系の初期化に向けた実験 不完全な量子系の初期化は「測定に使う初状態が確率的にしか得られない」という問題の他に「制御や検出の操作にもエラーが生じる」といった問題を起こす要因となる。そのため量子系の初期化は本研究において重要な位置づけにある。NV中心の電子スピンは光励起により容易に実現できるのに対し、核スピンの初期化には電子スピンを介したスピン状態の初期化が必要である。前年度は制御性の良さから電子スピンと核スピンとの結合が比較的大きな量子系を用いたが十分な成果は上がらなかった。これは結行強度が強すぎるため電子スピンを初期化する際に核スピンにノイズが入ったことが原因と考えられる。今後は電子スピンと核スピンとの結合を抑えた量子系での実証を試みる。 (2)周囲からのノイズを抑えた微小磁気測定の理論提案 ノイズを抑えた測定手法の確立は微小磁場の信号が周囲からのノイズの信号強度以下の場合非常に重要な意味を持つ。このノイズの原因には「測定時間と測定対象の持つ信号の間の不確定性」といった量子系の性質からくる要因や「測定器の機械的な動き」等の技術的な要因などが考えられる。前年度の理論研究では、これらのノイズがたとえ微小磁場からの信号よりも大きなものであったとしても電子スピンと核スピン間の量子力学的な干渉を用いることで実効的に抑えることが可能なことがわかった。今後の研究では本手法の実証を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
量子系初期化の実験は現状では十分な成果はないが、先行研究との比較から対策は練られているため実現に向け大きな課題はないと考えられる。また理論面での研究においては、今回新たに提案する手法は電子スピンを用いた磁気測定では前例がなく十分な成果と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は量子系の初期化と前年度に理論提案した磁気測定の定証を目指す。研究計画書では本年度はノイズ磁場を用いた量子系の初期化を行うとあったが、新たに理論提案した磁気測定の実現を目指すため、まずは先行研究で挙げられた手法での量子系の初期化を行う。また、従来の手法で得た量子系初期化の知織は次年度に行うノイズ磁場を用いた量子系の初期化の実現に向け重要な意義を持つ。
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