研究課題/領域番号 |
13J04171
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
北原 まり子 早稲田大学, 文学研究科, 特別研究員DC2
|
キーワード | バレエ・リュス / 牧神の午後 / 春の祭典 / 舞台幕 / アルミードの館 / 花園歌子 / フォレスト・ガーネット / ニコライ・レーリッヒ |
研究概要 |
特別研究員採用初年度は、研究課題「バレエ・リュスの初期作品群(1909~1913年)の美学的分析とその国際的受容」の内、美学的分析においてはその「絵画的な舞台美術」を、また、国際的受容に関しては「バレエ《春の祭典》の戦前日本における受容」を分析・考察した。資料調査は、フランス、ロシア、日本で行われ、フランス国会図書館で振付家M. フォーキンの手紙資料を中心に調査を行い、モスクワのシチューセフ国立建築博物館にてN. レーリッヒの舞台幕に関しての調査を行った。また日本の《春の祭典》に関して、花園千名美氏、ヨネヤマママコ氏、今井重幸氏、加藤燿子氏への聞き取り調査を実施した。 上記の調査及び考察により、バレエ・リュス初期の作品群の内その革新的な舞台演出で知られるバレエ《牧神の午後》(1912)に関して、本作品の絵画的な様式は突如出現したものではなく、1909年より続くバレエ・リュスの舞台表象の絵画化の流れの内にあることを証明した。その際、これまで考察の対象にされていなかった《アルミードの館》(1907)及び《ケルジェネツの戦い》(1911)に光をあてたことも成果であった。また、《春の祭典》の20世紀における創作に関しては、欧米における本作品の受容に関する研究が1980年代より活発化し2000年代に一つの結論にすでに達しているのに対して、日本における受容はこれまでほとんど検証されてこなかった。今回の調査により、戦前における三つの上演の試みを発見、それらの詳細を考証し明らかにすることができた。 これらの研究成果は、権威ある国内外の学会で発表され(舞踊学会、SDHS/CORD共同開催の大会)、フランス国内でも発表の機会を得た、とりわけ「バレエ《春の祭典》の戦前日本における受容」は、2013年が《春の祭典》初演100周年にあたり、国内外における本作品に対する関心が高まっており、研究成果を発表するに当たりその機を捉えることができ、アメリカ及びフランスの研究者に評価された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の調査・考察で得られた成果は、目的で記した舞踊学会及びSDHS/CORD共同開催学会だけでなく、指導委託先のフランスに於いても口頭・論文として公にできた。調査地は、当初予定の内・最重要の日本、フランス、ロシアにて実施できたが、イギリスでは行わなかったため、評価区分を②とした。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画の変更は特にはない。初年度は「絵画的な舞台」に関する調査を中心に行ったので、振付の詳細に関してはあまり触れなかった。今後は、M. フォーキンの振付に関する言説を収集し分析することによって、バレエ・リュス初期(1909-1912)の「絵画的舞台」と振付の関わりについて明らかにする予定である。そのため、フランス国立図書館、国立レーニン記念図書館(ロシア)、ハーバード大学演劇コレクション(アメリカ)において資料調査を実施する予定である。日本においては、神奈川近代文学館で花園歌子資料を調査、広島において葉室潔に関する調査も行う。これらの成果は、7月にフランス(WDA総会)で発表、年度末には早稲田大学文学部紀要への論文掲載を予定している。
|