研究課題/領域番号 |
13J04185
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 輝 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 植物 / 遺伝子 / 乾燥ストレス / 高温ストレス / 転写因子 / 転写制御 / シロイヌナズナ / イネ |
研究概要 |
DREB2AとNF-YC10が直接的に相互作用するということをプルダウンアッセイによって確認し、シロイヌナズナ植物体内での相互作用を共免疫沈降実験によって確かめた。また、NF-YC10が高温ストレス誘導性のDREB2A標的遺伝子プロモーターに直接結合していることをクロマチン免疫沈降実験によって明らかにした。 NF-YC10と三量体を形成すると考えられるNF-YA2およびNF-YB3が植物体のどの組織で発現しているかについてプロモーターを用いたGUS染色実験で明らかにし、またGFP融合タンパク質の蛍光観察により、NF-YA2およびNF-YB3が細胞内のどこに局在しているかを明らかにした。さらにNF-YB3過剰発現シロイヌナズナでは、NF-YC10過剰発現シロイヌナズナと同様に、高温ストレス誘導性のDREB2A標的遺伝子の発現が向上しており、高温ストレス耐性が有意に向上していることが明らかになった。一方で、NF-YA2過剰発現体では、高温また乾燥ストレス誘導性の遺伝子の発現に変化は見られなかった。 NF-YA2、NF-YB3、NF-YC10に関して、複数の遺伝子を過剰発現したシロイヌナズナおよび複数の遺伝子の発現を消失または抑制した変異体を作出した。今後はこれらの多重過剰発現体・変異体に関して解析を行っていく。 シロイヌナズナNF-YC10がイネ、ダイズにおけるDREB2A相同タンパク質(OsDREB2B2、GmDREB2A ; 2)と相互作用することを酵母のツーハイブリッド実験とBiFC実験により確認し、NF-YC10およびイネにおけるNF-YC10相同遺伝子(OsNF-YC16)を過剰発現したイネを作出した。NF-YC10過剰発現イネに関しては、非ストレス条件下において生長に変化がないことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに達成するべき課題として、シロイヌナズナではNF-YA2、NF-YB3、NF-YC10の個別の遺伝子の機能解析と多重過剰発現体・変異体の作出、イネではNF-YC10とDREB2A相同タンパク質との相互作用の確認と過剰発現体の作出が存在していた。上述の通り、これまでに示唆されていたDREB2AとNF-YC10の相互作用や協調的な役割を確かめ、NF-YA2とNF-YB3過剰発現の解析を終えている。また、今後解析に用いる多重過剰発現体・変異体の作出も行うことができた。イネに関する実験についても、おおむね計画通りに進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は現在までに作出した植物体の解析を中心として、NF-YA2、NF-YB3、NF-YC10からなる三量体の性質を明らかにしていくと共に、環境ストレス耐性がシロイヌナズナだけでなくイネにも付与することができているかの確認を行う。 まずシロイヌナズナに関してNF-YA2、NF-YB3、NF-YC10遺伝子の多重過剰発現体・変異体を用いて、ストレス条件下における遺伝子発現解析およびストレス耐性試験を行う。さらにゲルシフトアッセイにより、このNF-Y三量体がどのようなプロモーター配列に結合するかを明らかにしていきたい。 イネではNF-YC10およびNF-YC10相同遺伝子の過剰発現体の高温ストレス耐性試験および遺伝子発現解析を中心に推進していき、過剰発現によってストレス耐性や遺伝子応答に変化が起きているのかを確かめる。
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