研究課題/領域番号 |
13J04186
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森田 薫 東京大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 制御性T細胞 / Egr2 / Egr3 / LAG3 / B細胞 / 自己抗体 / 全身性エリテマトーデス |
研究実績の概要 |
1.「研究目的」: 制御性T細胞 (Treg)は自己および外来抗原に対する免疫寛容誘導に重要な役割を果たしている。当研究室ではその一つであるCD4陽性CD25陰性LAG3陽性Treg (LAG3+ Treg)を同定しており、転写因子Egr2がそのマスター制御遺伝子と考えられている。EGR2は自己免疫疾患である全身性エリテマトーデス(SLE)の疾患感受性遺伝子であり、T細胞特異的なEgr2コンディショナルノックアウト(Egr2CKO)マウスはSLE様症状を呈する。しかしその発症は緩徐であり、Egr3による機能補完が想定される。本課題ではT細胞特異的Egr2/Egr3ダブルCKO (Egr2/3DKO)マウスを作製し、T細胞におけるEgr2/Egr3の免疫恒常性維持機構を明らかにする。 2.「H26年度の研究成果」:H25年度にEgr2/3DKOマウスを作製し、Egr2/3DKOマウスがEgr2CKOマウスと比較して早期よりSLE様症状を呈し、脾臓において過剰な胚中心形成を引き起こすことを明らかにした。H26年度は病態機序に関してLAG3+ Tregの機能解析を中心に解析を行った。その結果LAG3+ Tregは抑制性サイトカインのTGF-β3を介してB細胞の抗体産生を抑制することが判明した。またEgr2/Egr3を欠損したLAG3+ TregではTGF-β3産生が著明に低下し、Egr2/3DKOマウスに野生型由来のLAG3+ Tregを移入すると過剰な胚中心形成を抑制した。 3.「研究成果の意義および重要性」:以上よりT細胞においてEgr2/Egr3は、特にLAG3+ Treg におけるTGF-β3を介した抗体産生抑制に重要な機能を果たしており、欠損することで自己免疫疾患発症に関与していることが明らかとなった。本知見は自己抗体産生機構における分子制御メカニズム解明の重要な礎となる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度はEgr2/3DKOマウスのSLE様症状とLAG3+ Tregの機能異常との関係に関して詳細に解析することができ、LAG3+ Treg はTGF-β3を介してB細胞の抗体産生抑制に寄与していること、TGF-β3産生においてEgr2/3 がきわめて重要な機能を果たしていることを明らかにし、当初の目的を達成した。LAG3+ TregによるTGF-β3を介した自己抗体産生制御機構に関する研究成果は論文として発表し(Nat Communications. 2015 Feb 19;6:6329)、同論文はNature Japanにおいて「注目の論文」に選出され高く評価された。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度はLAG3+ TregのTGF-β3産生におけるEgr2/3の制御機構に関して詳細な解析(ChIP seq/ Luciferase assay/siRNAによる発現抑制実験/RNA sequencing 等)を行うことで、TGF-β3の産生機序を明らかにする。また、Egr2/3DKOマウスにおける過剰な胚中心肺中心形成に対するLAG3+ Tregの関与に関してさらに詳細な解析を行う。
|