研究概要 |
平成25年度の研究成果は2点ある. 1点目は, 低レイノルズ数における空力特性の定式化である. 風洞試験結果を基に, 種々アスペクト比の翼における低レイノルズ数環境での空力特性を, レイノルズ数やアスペクト比, 迎角, 横滑り角等の入力値から算出する方法を構築した. また, 展開中の機体周りの流れの干渉の影響を, 風洞試験により実験的に求めた. これらにより, 火星探査航空機の空力に関する概念検討が, より高精度に実施できるようになった. 2点目は, 数値シミュレーションによる空中展開動作の解析である. 昨年度末に作成しつつあったシミュレーションプログラムをさらに改良した. 平板の空力特性を導入することで, 飛行機の各部分に対して適切な別個の空力特性を与えられるようにし, シミュレーションの精度および計算可能条件を大幅に改善させた. この改良したシミュレーションプログラムを用いて, 翼を左右対称に展開させる場合と, 翼を左右独立したタイミングで展開させる場合に, 空中翼展開挙動がどのように異なるか, また, なぜそのような運動になるのかを明らかにした. さらに, 主要な入力パラメータ全てについて, 値を変化させた場合に空中翼展開挙動に対してどのような影響を与えるかを調査した. その結果, 翼の展開タイミングや, 翼展開用のバネとダンパの設定が重要であることを明らかにした. 今後尾翼の展開を導入すれば全展開シーケンスを模擬できるようになるため, 空中展開動作のシミュレーションの研究は完成目前のところまで到達しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は, 初めに昨年度完遂できなかったシミュレーションによる運動解析を実施し, 概念設計に対する知見を収集する. その後, その知見を反映して概念設計を実施し, 火星探査航空機を提案する. さらに, 主となるミッションのほかに複数のミッションに対しても概念検討, 及び火星以外の低レイノルズ環境での航空機の概念設計を実施することで適用事例を増やし, 最終的に低レイノルズ数航空機設計論としてまとめる. 計画の遅れは軽微であり, 一年間のうちに吸収できると考えられる.
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