情報処理デバイスの高性能化を目指して、チップ内光配線技術が注目される中、光デバイスと電子デバイスのサイズ不整合が課題の一つとして挙げられている。表面プラズモンを利用した光デバイス(以下、表面プラズモンデバイス)は、光の回折限界を越えて小型化できることから、チップ内光配線における新たな通信デバイスとして期待されている。 本研究では、表面プラズモンを通信キャリアとして用いたチップ内光配線の実現を目的とし、これまでにシリコンベースの表面プラズモンデバイスを実現してきた。 当該年度は、(1)表面プラズモン導波路と検出器の集積化、(2)表面プラズモンデバイスと半導体トランジスタの集積化、(3)表面プラズモン信号による電子回路の動作実証、(4)表面プラズモンを介したコヒーレント光信号の伝送特性の評価を行ってきた。(1)では、金属薄膜上を伝播した表面プラズモンをグレーティングを介して金属とシリコン界面に導き、内部光子放出効果に基づいて光電流に変換する構造を提案し、その動作を実証してきた。(2)では、標準CMOSプロセス後に集束イオンビーム加工を施すことにより実現した。(3)では、シリコンに吸収されない波長の光により励起した表面プラズモンを介して、電子回路が静的および動的に動作することを示した。(4)では、光ヘテロダイン法を用いて、光周波数変調信号が表面プラズモン導波路上を伝送することを実証した。
|