研究概要 |
本年度は、NMDA受容体を構成するGluN2Aサブユニットに存在するとされるZn2+結合部位に結合しグルタミン酸誘発性神経細胞死を抑制する一方で、脳虚血時には神経終末から大量に放出され、ミトコンドリアを傷害することで神経細胞死を誘発するとされる亜鉛イオンに着目した。そこで、これに関する実験を遂行するにあたり使用する試薬の亜鉛イオンおよびカルシウムイオンに対する特異性の評価を行った。 カルシウム特異性が高いとされる試薬には、キレーターであるEGTAやBAPTA, 蛍光指示薬であるFluo-3やRhod-2があり、亜鉛特異性が高いとされる試薬には、キレーターであるTPEN, 蛍光指示薬FluoZin-3, イオノフォアpyrithioneがある。細胞に蛍光指示薬を取り込ませ、カルシウムイオンおよび亜鉛イオン存在下でこれらの試薬を添加し、蛍光強度の変化を観測し、試薬のイオン特異性を評価した。また、これら試薬存在下で亜鉛を曝露し、亜鉛誘発性の細胞死に対する影響をPI/Hoechst染色およびMTTassayを用いて評価した。 今回の結果より、亜鉛の研究分野で広く用いられているpyrithione、TPEN、FluoZin-3はカルシウムとはほとんど反応せず、亜鉛と特異的に反応することが示された。一方で、カルシウムキレーターとして知られるEGTAやカルシウム指示薬Fluo-3、Rhod-2は、カルシウムだけでなく亜鉛にも反応することが示された。
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