研究課題
本年度は、この抗NMDAR抗体による受容体活性化反応を抑制することができる薬物を探索することを目的として、解析を行った。本研究では、NR1/NR2Bサブユニットから構成されるNMDARのプロアミン結合部位で拮抗し、その受容体機能を抑制することが知られている化合物Xに着目し、人工的にNMDARを発現させたHEK293細胞を用いてSLE患者抗NMDAR抗体による受容体活性化反応に対する作用を評価した。NR1/NR2Bを遺伝子導入することでNMDARを強制発現させたHEK293細胞を、細胞内Ca2+蛍光指示薬Fluo-3とミトコンドリア内Ca2+蛍光指示薬Rhod-2 を含むrecording medium中で37 ℃、1時間静置しCa2+蛍光指示薬を取り込ませた。その後、recording mediumにて5分間洗浄し、『健常者IgG』、『抗NMDAR抗体陰性SLE患者IgG』および『抗NMDAR抗体陽性SLE患者IgG』を含むrecording medium(1μg/mL)中で1時間反応させた。そして、10μM Glycine存在下で10μM NMDAを添加し、さらに化合物X(0.01、0.1、1、10μM)を添加し、細胞内、ミトコンドリア内Ca2+濃度の変化に伴う各種蛍光強度の変化を、共焦点レーザー顕微鏡にて観察した。その結果、SLE患者血清中の抗NMDAR抗体によるNMDAR活性化の増強効果は、化合物Xの添加により有意に阻害されることが示された。このことより、SLE患者血清中の抗NMDAR抗体は、NR1/NR2Bサブユニットから成るNMDARに作用し、その活性化を増強する可能性が薬理学的に示された。また、SLEに伴って生じることが知られている神経障害(CNSループス)に対して、この化合物Xが有効な治療薬になる可能性が示された。現在、化合物Xは脳梗塞後の後遺症に臨床適応されている薬物であり、ヒトにおける薬物動態や安全性が確認されていることから、SLE患者のCNSループス治療への臨床適応に期待できると考えている。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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