研究概要 |
○研究目的 複素環は生物活性化合物の重要な構成成分であり、その効率的な合成法や構造変換法の開発は、創薬化学的に極めて魅力的な研究テーマである。また、「省資源」「省エネルギー」は環境マネジメントのための重要課題であり、省エネルギーを志向した連続反応の開発は、今後更なる注目を集めると予想される。 そこで私は連続反応を用いた、複素環の新規構築法の開発に取り組んだ。 ○研究成果 私はこれまでの研究で、フェノール誘導体からのipso-Friedel-Crafts型反応によって生成するスピロシクロヘキサジエノン中間体からの新規骨格転位反応の開発に成功し、テトラヒドロβカルボリン誘導体(Chem. Co㎜un 2012, 48, 5431.)やピロリジン、ビペリジン誘導体(TL, 2013, 54, 1562.)を得ることに成功している。本年度は①前述の反応開発の際に見つけた連続反応による多環式インドール化合物の合成、②骨格転位反応を用いたテトラヒドロγカルボリン誘導体の合成と不斉反応への応用、③骨格転位反応を用いた三環性含窒素複素環の合成という3つのテーマについて、研究を行った。 ①骨格転位反応の基質に二重結合を導入した基質を用いると、多環式のインドール化合物が得られた。多環式インドール化合物の多くは、特有の生物活性を持っており医薬品にも頻繁に見られる構造である。そこで私は本反応の条件の最適化と基質一般性の検討を行い、論文に纏めた(OL, 2013, 15, 2978.) ②また同様の骨格転位反応により、テトラヒドロγカルボリン類が得られることも見出した。また本転位反応の不斉反応への応用を目指し研究を重ねた結果、新規のチオリン酸アミド触媒を用いると、不斉収率は発現しなかったものの、20モル%の酸で84%収率にて目的物が得られた。本成果についても論文に纏めた(Tetrahedron, 2014, 70, 2151.)。 ③また前述の骨格転位反応が適用可能な新たな基質の開発にも成功し、鎖上の基質から三環性の含窒素複素環を一挙に構築することにも成功した。本論文は現在査読中である。
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