研究課題
Chlamydia trachomatis(以下、性器クラミジア)は性器クラミジア感染症の起原因であり、本感染症は世界で数百万人が感染し、不妊の原因となり、再感染も容易であることから、感染拡大の防止が望まれている。しかし、その感染様式や細胞修飾機構などは不明な点も多い。さらに、感染局所の女性生殖器粘膜面には多数の常在菌や他の病原性細菌が存在することにより、その病態形成機構をより複雑化している。加えて、近年女性生殖器粘膜面に存在するウレアプラズマやマイコプラズマが他の病原性細菌の感染に様々な影響を与えている可能性が示唆されている。また、我々の以前の研究で、性器クラミジアとウレアプラズマの混合感染が健常女性の膣粘膜面において高頻度に検出された。そこで我々はウレアプラズマ同時感染時における性器クラミジアの動態について細胞・分子レベルでの研究を行なうに至った。平成25年度はウレアプラズマが性器クラミジアの細胞内増殖に与える影響の解明に努め、性器クラミジアの主要宿主防御因子であるIFN-γ存在下で、ウレアプラズマ刺激によってクラミジアの生存性を高めている可能性を見出した。また、IFN-γによる性器クラミジア感染防御機構は、IDO (indoleamine2,3-dioxygenease)の発現上昇によるトリプトファンの枯渇である。しかしながら、ウレアプラズマ刺激ではIDOの発現に影響は見られなかった。この成果は、Journal of Infection and Chemotherapy (Yamazaki T et al. 2014)に採択されている。(2014年4月21日現在、未出版)以上の結果から、臨床での性器クラミジア感染症の複雑な感染様式の一部にウレアプラズマが関わっている可能性を示唆した。しかし、その分子機構についてはいまだ不明な点が多く、さらなる研究が必要である。
2: おおむね順調に進展している
ウレアプラズマの存在下において、性器クラミジアがIFNγの影響から部分的に回避できることを見つけ論文化した。Journal of Infection and Chemotherapy (Yamazaki T et al., 2014) (in press, 2014年4月21日現在、未出版).
クラミジア属の様な編性細胞内寄生性細菌に対する遺伝子変異株作製法は、conventionalなシャトルベクターやクローニング法が確立されていないために容易ではなく、世界的にも数例しか報告されていない。それ故、クラミジアの病態形成やその修飾機序の解明研究は、他の病原体と比較して立ち後れている。しかしながら、性器クラミジアの病態修飾機構の解明のためには、遺伝子変異株作製技術の確立が必須である。以上の点を踏まえ、最終的には混合感染時の性器クラミジアの病態形成や細胞修飾機構解明のために、今後の研究ではまず性器クラミジアの遺伝子改変系構築を行う。
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Environmental Microbiology
巻: 2 ページ: 486-497
10.1111/1462-2920.12266.
Journal of Infection and Chemotherapy
巻: (印刷中)
10.1016/j.jiac.2014.04.003