研究課題
クラミジア・トラコマチス(以下、性器クラミジア)は性器クラミジア感染症の原因菌であり、世界中で数百万人が感染し、不妊の一因であり、再感染も容易であるため、感染拡大の防止が望まれている。しかし、その感染様式などは未だ不明な点が多い。さらに、感染局所である女性生殖器粘膜面には多数の常在菌や他の病原性細菌が存在し、病態形成機構をより複雑化している。そこで、我々は性器クラミジアとウレアプラズマの混合感染が健常女性の膣粘膜面において高頻度に検出され、性器クラミジアの主要宿主防御因子であるIFN-γ存在下で、ウレアプラズマの同時感染によってクラミジアの生存性を高めている可能性を見出し発表した。詳細な修飾に関わる分子機序は未だ明らかではないが、III型分泌装置を介して宿主細胞に打ち込まれる未知エフェクター分子がその一役を担っていると強く考えられる。そこで、DNAマイクロアレイ解析とIII型分泌エフェクター予測ツールを用いて、新規エフェクター候補遺伝子の選別作業を行い、数個の遺伝子を同定した。一方、クラミジア属の様な偏性細胞内寄生性細菌に対する遺伝子変異株作製法は未だ十分に確立されていないため、容易ではなく、世界的にも数例しか報告されていない。それ故、クラミジアの病態形成やその修飾機序の解明研究は、他の病原体と比較して立ち後れている。そこで、性器クラミジアの潜在的プラスミドを利用した遺伝子変異株を作製し、緑色蛍光蛋白質GFPを性器クラミジア菌体内で発現させることに成功した。これにより、クラミジアの遺伝子操作研究がさらに発展し、病態形成機構の解析が進むと予測される。今後は、新たに見つかったエフェクター候補の性器クラミジア遺伝子変異株に応用し、性器クラミジアの病態形成に与える影響について調査していく。
2: おおむね順調に進展している
性器クラミジアの病態形成機構に寄与すると考えられるIII型分泌装置の新規エフェクター候補遺伝子を見出した。また、性器クラミジアの潜在的プラスミドを利用した遺伝子変異株を作製し、性器クラミジア菌体内で緑色蛍光蛋白質GFPを発現させることに成功したことから、研究のさらなる発展が望まれるため、おおむね順調に進展しているとした。
作製したGFP発現性器クラミジア遺伝子変異株の構築を応用して、昨年度に同定した新規エフェクターの性器クラミジア遺伝子変異株を作製し、性器クラミジアの病態形成に与える影響について調査する。また、混合感染時の新規エフェクターの動態についても精査していく。今現在ではGFPの発現量やタイミングは性器クラミジアの増殖サイクルに対して一律であるが、エフェクターの発現タイミングを薬剤投与量に応じて変化させ、性器クラミジアの細胞内増殖サイクルに依存せず、実験者の任意に調節する機構も作製していく。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件)
PLOS ONE
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